黄色く目立つようにデザインされたこの袋の名前はgoedzak(フッザッグ)
いらなくなったモノをこの袋に詰め、路上に置いておく。誰でも袋の中に欲しいものがあれば、持ち帰ってOK。リサイクル業者も回収でき、最終的に残ったモノは市がゴミとして収集。いわば「共有されたリサイクル袋」なのです。
開発したのはたった2人のデザイン会社WAARMAKERS。彼らのオフィスを訪ね、詳しく話を伺ってみました。
「どう影響されたいのだろうか?」から考える
ーーコンセプトはどうやって作ったのですか?
Simon氏:フッザッグは、どうやったら利他的な行動を引き出せるか?どうやったら人の行動を変えることができるか?というところから始まりました。それは自分たちの興味がある分野でもあります。特にフッザッグは利他的な行動に注目しています。
最初にモノの機能のデザインではなく、デザイン自体のインパクト、ユーザだけでなく、社会全体としてのインパクトを考えました。
Maarten氏:自分たちはこれから作る製品が持つだろう効果、それがどう人の行動にポジティブな影響を与えるかということを考えたんですね。
(実際にどんな影響を与えるか)正確に予測するできない、けれども起こりそうなことを提案することはできるわけです。そこでaltruism(利他主義)の考えを採用してみました。
ーーではユーザーインタビューなどしたのでしょうか?
Simon氏:ん〜最初は「観察」ですね。
Maarten氏:面白かったよね。
Simon氏:街に出て、道行く人の親切な行為を見ることがとてもおもしろかったですね。それがアイディアのきっかけだったと思います。
Maarten氏:彼は人の行動を予測する感度が並外れて高いんだよね。親切な行動をしたとき、これが「親切な行動」を起こしたと自分では考えないですよね。見返りもないのに。
これがaltruism(利他主義)の興味深いところでもあるんだけど、考えてみると「なんでこんなことしたんだろ?」「どんな状況がそうさせたんだろう?」って疑問が湧いてきます。
デザインがそういう行動を刺激できるか、トリガーになれるかってことですね。逆算思考というか、行動からデザインしていくというか。それが最初に彼が掴んだ概念だと思います。
小さい会社だからこそ、話題を作る
ーーなるほど、では開発で苦労されたことはなんでしょうか?
Maarten氏:まあ、すでにリサイクル用のゴミ袋はあったわけです。なので新しく採用してくれる企業や行政を見つける必要がありました。これが一番大変でしたね。
リサイクル業者や中古品を扱うお店、行政などに話を持っていっても、まだ名前も知れていないデザイン会社だからね(笑)いきなり経営層とかに話ができないんですよ。
そこで、先にネット上で小さな話題を作りました。写真を撮ってコンセプトを伝えて、人々が拡散してくれて。営業に行く前に、相手がすでにコンセプトを知っているわけですね。これが大きな助けになりました。
オランダ最大手の小売店Albert Heijnともコラボしています。
こちらは店舗に置いていく方式で持ち込みすぎないように袋も小さくしたりと、細かい点は違うのですが、同じアイディアを異なる方法で試していく最中です。現在は詳細をネットでも見れるようになっています。
ーー反響はいかがでした?
Simon氏:いろいろな関係者がいるのですが共通していたことは、いらなくなったモノを誰かにあげる行為を楽しんでいたことですね。たとえ誰かにた渡ったことが確認できなくても。
デザインされていない行動をデザインしていく
ーー次のステップは何ですか?
Simon氏:ん〜大きなクエスチョンですね(笑)
どうやって周りの環境を自分たちが培ってきたデザインやクリエイティブ・シンキングを使って扱うか?ですかね。例えば今オランダ鉄道と一緒にプロジェクトをやっています。人口が増えてきて、電車が満員になりつつあります。そこで、どうやったら状況をポジティブにリフレームできるか、どうやったら多様な人が使う電車の体験を向上できるか?が課題ですね。
Maarten氏:東京の電車じゃあ何もできないけどね笑。(一同笑い)オランダならまだなんとかできる。デザインのコンセプトは文脈を変える、状況を変える、人の見方を変えていくということ。本質的にはまだデザインされていない人の行動をデザインしていくって感じです。
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インタビュー中に一番感じたのは、彼らの「人間への愛」。デザインにもっとも必要な要素なのかもしれません。
ライター&キュレーター
小檜山 諒 フリーランスライター&キュレーター
世界中の面白いアイディアを集めたブログを運営中。「問いが変われば、答えも変わる」を信じて、アイディア発想など研究しています。ハッとさせられるようなアイディアが大好物。アイディアデザインコンサルタント。モットーは「LESS IS MORE」