世界的にタクシー業界の”今”は熱い。なぜならUberやLyftなどの台頭で、次の一手をどの会社も模索しているからだ。この試行錯誤は、他業界から見ても参考になるところは多い。
さて、スウェーデンのタクシー会社が、セラピストを雇って、乗客向けに、無料でセラピーを行うプロジェクトを開始した。
Cab firm puts therapists in back of its cars to counsel lonely Swedes
タクシーに乗って、ドライバーとのさりげない会話から、学びを得たり、癒しを得られたりする経験を持つ人は少なくない。この事実からインスピレーションを得て、この度、提供され始めたサービスは、10分から1時間程度、乗車客に対して、後部座席でセッションを行うものだ。
現在、3名ほどセラピストを雇用しているようだが、このセッション付きタクシーを予約することも可能だ。
以前、ライドシェアサービス・Lyftが、ドライバー個人を、「More Than a Ride」(乗ること以上に)とブランディングしていることをご紹介した。
【参考】
・ライドシェアサービス「Lyft」が行う”P to P時代のマーケティング”から学ぶこと
今、タクシーに乗ると、多くの場合ドライバーの名前と顔写真くらいしか、表示されていない。しかし、これからは、そのドライバーがどういう人なのか?また、追加でどのようなサービスを提供してくれるのか?ということまで期待されるようになる可能性は高い。
人を利用するシステムから活かすプラットフォームへ
PHOTO: Happy celebrating from Shutterstock
人間は、社会の中で働くと、多くの場合巨大なシステムの中に組み込まれた一人の抽象的な人間と化してしまう。
具体的な顔を持ち、性格を持ち、好きなことや苦手なことを持つ、生身の人間は、薄いレースのカーテンで器用にくるまれ、”個”の存在は、こちらが近づいていっても、中々見分けにくい。
企業システムの崇高な理念が書かれた額縁の裏には、人をいかに利用するのか?というひんやりとした本音が隠れていることも多い。
しかし、これから伸びていく会社、サービスは、巨大なシステムに利用できる人間をはめ込むという発想ではなく、作ったプラットフォームの中で、人を活かす中で発展していく。
システムの中にはめ込むのではなく、プラットフォームの中で活かすという発想の転換は、現代における企業社会の底流に流れる哲学をも揺り動かす。建前と本音が完全に別れ切った社会は終焉するのだ。ここに、次の時代の光明が見え隠れしている。