10/12(木)都内で、SBメディアホールディングスとギルドワークスが共催する、テクノロジーで社会の課題を解決するをテーマにしたビジネスコンテスト「MVPアワード」が開催された。
現代は、シニア、少子化、女性活用、地方創生など多くの課題を抱えている。それをITの力によって解決しようという試みが世界的に行われてるが、資金や時間のリソース、開発技術の不足によって、陽の目を見ないアイデアや企画も多いのが現状だ。そうした問題の解決、事業化を支援するためのビジネスコンテスト「MVPアワード」は、今年で第3回目を迎えた。
120を超える多くのアイデア、企画から、最終選考5組が決勝進出。そのモデルについてご紹介する。
ウェブセミナーと人脈拡大のための名刺交流ツール
1人目は長野県長野市の株式会社ウェブシェアの山崎邦夫氏が提案する「ウエブセミナーと人脈拡大のための名刺交流ツール 」だ。
WEBセミナーは、いつでもどこでも受講できるメリットがあるため、セミナー受講の空間と場所、そして時間から解放される。一方で、リアルな場と違って、参加者同士の繋がりは生まれにくい構造となっている。
そこを繋げて、関係資本や信用資本などのソーシャルキャピタルを生み出そうというのがこちらの企画である。
同じ目的を共有したセミナー参加者同士が、受付の時点で、プロフィールを共有して、出会いを促進するシステムを提案した。山崎氏はそこから更に、参加者同士がコラボレーションをして、新たな事業を構築していけるようモデルを検討していた。
マネージャーの生産的活動加速のコンシェルジュ
続いては、マネージャーの生産的活動加速のコンシェルジュ「KaizenNote」石田勝信氏だ。
できるビジネスマンや気鋭のアントレプレナーは、日々アイデアとタスクが溢れている。しかし、どうしても日常的に力が入る仕事は、「緊急で重要な仕事」だ。
しかし、長期的に最も付加価値が高いは、「緊急ではないけれど重要な仕事」である。それをいかに日々意識して積み上げていけるのか?仕事の中に組み込んでいけるのか?が、仕事と事業の成否を分ける。
その課題を解決するために開発をしているのが「KaizenNote」だ。「ボットの時間メンター」が、ちょうど良いタイミングで、自分にとって緊急ではないけれど、重要な仕事をやれているかどうかを問いかけてくれる。
仕事の進捗を定期的に振り返ったり、面倒で一定期間使わなくなっても再度うまく問いかけをしてくれるプッシュ機能がKaizenNote活用を促す。
日々のパラメーターデータを集め、結果、個々に合わせた「超パーソナライズ化」できるかが重要だと石田氏は語る。また、幅広くデータが集まってくれば、できるビジネスマンが、どのように「KaizenNote」を活用しているかまで分かるようになるので、それをプリセットし幅広く横展開できるとも考えた。
石田氏は、ビジネスマンの生産性が、これによって3倍にれば経済効果は5.2兆円の底上げにつながると意気込んだ。
チームの状況が分かる MAP(サマリー)ツール「pickupon」
3人目の登壇は、チームの状況が分かる MAP(サマリー)ツール「pickupon」を開発している小幡洋一氏だ。
チャットを使ってのコミュニケーションは増えている。現状すでに、約3割の企業がビジネスチャットを活用しているという。
よって、コミュニケーションスピードは格段に速くなっているが、一方で課題になっているのが、一人一人の仕事のリアルタイムな状況である。その把握ができないことがボトルネックとなり、生産性の加速が阻害されているのだ。
実際ヒアリング調査をすると、チームメンバーの仕事の状況が把握できず課題だと感じている人が7割に上り、その課題を乗り越えている残りの3割は、結局リアルなコミュニケーションで、それを補っているという実態が浮き彫りになった。
pickuponは、それをビジュアライズすることによって、チーム一人一人の仕事の状況を瞬時にリアルタイムで把握することができる。ビジネスモデルはフリーミアム+広告モデルを検討中だ。pickuponのビジョンは、リアルタイムの仕事の状況を可視化することで、よりフラットな組織を作ることだと小幡洋一氏は語った。
安心安全の時給野菜ニーズに応える自産地消型栽培システム「自産地消Bot」
4人目は、ロボットを活用することで自分で手軽に野菜を作ることができるシステムの構築を目指す三木裕紀氏だ。「地産地消から自産地消型のモデルへ」がビジョンである。
国内の食料自給率は40%以下になっている。また農家の高齢化問題は深刻で待った無し。この問題をアグリボットと新たなシステムの導入・活用することで、解決しようというものだ。
パレット(1.1メートル)上に土壌を作ることから始まり、丸いコロニーに100パレットを入れ込む。土壌分析、土壌を循環までをシステムと連携させて管理することが目標だ。
企画のポイントとして、安全で安心な食を求める消費者に、品種改良されていない高品質で食物アレルギーの少ない固定種作物を提供することをあげていた。
現状の競合は楽天が運営する「ラグリ」である。まずは、オープンソースの農業ロボット「Farmbot」を一台実装して、実験を開始する予定だ。
在庫管理負担をゼロにする材料管理 IoT サービス「TANAORO」
最後の登壇は、飲食店の在庫管理負担をゼロにする材料管理 IoT サービス「TANAORO」を提案する荻原裕氏。
店長やスタッフは、「発注量=基準値−在庫数」を日々手作業で行なっている。その労力は小さくない。ワインのような液体は目分量で行っており、人によって誤差も大きくなる。
また、ジントニックなどのカクテルを作る際に、その作り方を大雑把にすると、ジントニックの量の減りが早くなり、利益率は3%も押し下げられる。つまり、ロス管理は飲食店にとっては重要な課題なのだが、これもできているところは少なく、やっているところでも目分量で管理しているのが現状だ。
その課題を食材残量をIoT技術で自動管理してくれる「TANAORO」を導入することで解決するわけだ。
既存の容器で簡単に活用できるように、後付けセンサーシステムにし、食材残量が自動でスマホやPCで確認・管理できる。結果、残量チェックの時間を大幅に削減でき、例えば1000店舗規模であれば、年間1億円の人件費削減が可能となるという。またロス率3パーセントを1%に下げられれば、結果、8日分の店の利益が確保される計算になる。
また、実際に飲食店にヒアリング調査をして分かったことは、店長の休日出勤と日々の業務の心配事を減らすことができるという点だ。後者の定性的な心理効果は、思っているより大きなインパクトを及ぼしそうだ。人材不足に悩む飲食店に大きなプラスをもたらすシステムとなる可能性がある。
「TANAORO」の開発はまずは、飲料と調味料などの液体の管理に特化するとのことであった。
以上、決勝に登壇した5つのモデルのご紹介をした。
結果発表であるが、残念ながら今年は最優秀賞はなし。優秀賞は、KaizenNote石田勝信氏(左)、特別賞を自産地消Botの三木裕紀氏(右)が受賞をした。これからにますます期待をしたい。