時代の潜在意識を刺激する小さなアクションは、世界を変えるキッカケを作り出す。
2017年6月11日、傘の日。
銀座・原宿の2大都市に現れた、カラフルな傘を持って街を練り歩く、女子たちの群れ。 彼女たちは「傘のパレード」を企画・実行する女子大生たちだ。 なぜ「傘のパレード」を開催するに至ったのか。今回はその裏側に迫る。
きっかけは、雨の日を楽しむ人のWEBメディア「レニピ」
恵みの雨と謳われる一方で、外に出ることが億劫になったり、気分が下がったり、何かにつけて人々の気持ちを憂鬱にする雨。この雨に対するマイナスイメージを払拭するべく、2017年6月7日にあるメディアが立ち上がった。 その名も、雨を楽しむ人のWEBサイト「レニピ」。日本の1/3を占める雨の日が楽しくなったら、今よりもっと毎日が充実する。そんなコンセプトのもと、雨が好きなる、楽しくなるコンテンツを配信している。 例えば、このような記事が並ぶ。
・絶対に置き忘れない強烈インパクトな傘5選
・知る人ぞ知る、あえて雨に濡れて楽しむシャワーラン
・minor-iのレイニーソング ーMy Rainy Song #010
この「レニピ」をたまたま見つけ、強く惹かれたのが、青山学院大学3年で、日頃より学外活動として、企業との共創プロジェクトにも参加する古川里彩子さんだ。
「雨の日しか体験できない、独特の雰囲気や街並み、匂いなど、私は雨の日が大好きです。でも多くの人は濡れるのが嫌だ、なんとなく憂鬱な気持ちになる、などマイナスのイメージばかり。自分は変わり者なのかな、と思っていたくらいです。でも、「レニピ」を見つけて、雨の日を楽しもうというコンセプトに強く惹かれました。そこで、何か私たち学生も雨を楽しむ人=レイニーピーポーになって、雨を楽しむことができないかな、とこの企画を考えました。」
古川さんは早速、同じく「レニピ」に共感する女子大生を集め、企画会議を行った。 そして女子大生チームで企画を考える中で、6月11日の傘の日を知り、この日に合わせたイベントを開催するに至った。
年間1億3000本も消費される「傘」の環境問題を解決したい
「傘の日」を調べる中で、彼女たちが見つけたのが、傘の消費問題だ。 日本の傘の年間消費量は1億3000本。この数は、ひと雨が降ったら500本も消費される計算になる。
どこかに置き忘れても、また新しいものを買えばいい。 軽い気持ちで買われ、そして捨てられていった傘たちの数は、世界一だという。 実際に「傘のパレード」を企画した女子大生たちも、この現状を知るまでは、傘に対する意識が低かったという。 企画に携わった青山学院大学4年の山田晃子さんは語る。
「これまでは、ビニール傘を使っていて、忘れてもまあいいか、と何の愛着もありませんでした。だから1億3000万本も消費されていることに驚いたんです。そこで、使い捨て感覚ではない、自分のお気に入りの傘を持つようになったら、愛着も生まれるし、雨の日に外へ出かけるのも嬉しくなるのではないかと考え、傘のパレードという企画に至りました。」
実際の「傘のパレード」は、銀座6丁目の歩行者天国と、原宿の2大都市で実施された。 自分のお気に入りの傘を持って、友達と街を歩く。 ただそれだけの行動だが、イベント参加者にとっては、雨を楽しむこと、傘に対する意識改革という、2つの新しい体験価値が生まれたようだ。
一見女の子たちがお気に入りの傘を持って街を練り歩くだけの取り組みに見える傘のパレード。 しかしその取り組みは、雨の日という憂鬱な気持ちと、傘の消費問題を吹き飛ばすためのきっかけを担っている。