世界初の「VR映画館」がアムステルダムにあるということで足を運んでみました。今回インタビューに応じてくれたのはマネージャーのClaartje氏。VRを初めて体験した時に衝撃を受けてこの業界に進もうと思ったのだとか。
彼女の話から見えてきた少し先の「VRの未来」をお伝えします。
Q.さっそくですが、お客さんの反応はどうでしょうか?
A.多くのお客さんは楽しんでもらっていますよ。中にはイマイチという方もいますが。通常の映画コンテンツとは全く異なっているので、VRに対する期待値をマネジメントすることが重要だと思います。また年齢層もお子さんからお年寄りまで特にターゲットを絞っているということはないです。
Q.VRコンテンツはどうやって作っているのですか?
A.主に他のVRプロダクジョンと契約を結んでコンテンツ提携をしています。具体的に何社かは把握していないのですが、かなり多いはずです。さらに、通常の映画とは全く異なる制作手法です。カットごとに撮るのではなく、一発撮りですし、照明の問題もあります。制作費用は高いのが現実です。
Q.プラットフォームのような立場なのでしょうか?
A.そうですね、自社にもコンテンツチームがいますが、作っているのは数コンテンツですね。
Q.立ち上げの際に苦労したことはなんですか?
A.たくさんの問題がありました。装置もスタッフもたくさん必要でした。さらに、立ち上げ当初はコンテンツ配信システムがなく、最後の順番の人が見始める頃には、最初に見始めた人がすでに終わっていたりしました。現在はシステムができたので問題は解決できましたけどね。
Q.なるほど、では現在の問題はなんでしょうか?
A.リピーターを増やすということですね。また見たいと思わせることができるかどうか。VRというテクノロジー自体に興味があって見ているわけで、普通の映画のように有名俳優を見たくて来ているわけではありません。制作側にとっても、映画館にとってもそこが問題です。
Q.少し話題はそれますが、VR映画に広告などは入れないのでしょうか?
A.計画はしていますがまだ開発途中です。映画が始まると星空が投影されてそこに広告を入れるような形です。マーケティング手法も確立されていないですし、(技術的に)どうやるのかは分かりません、個人的には広告が好きではないですが、VRなので素晴らしい体験になると思います。
Q.今後の展開は?
A.2つあるかなと思います。VR映画館を増やすこととコンテンツ配信です。前回、ヨーロッパを中心にポップアップでVR映画館を作ったところ大成功しました。そこで常設のVR映画館をアムステルダムにオープンすることができました。次はフィンランドやルーマニアでオープンできそうです。より多くの人にVR体験をする機会を提供していきます。さらにARやVRのコンテンツを他の企業へ提供していくことですね。
この後、実際にVRシネマを体験。想像しているより没入感があり、終始ぐるぐると椅子を回しながら約30分、合計3つのコンテンツが用意されていました。内容は伏せますが、映画を見ているというより、映画の中にいるという感覚に近い印象を受けました。
今回インタビューと実際のVR映画を見て一番感じたのは「VR」はまだまだ手探りだということ。現段階ではVR映像の制作費用も高く、ヘッドセットもスマホ並みには普及していません。マーケティングもVRを使った広告手法も確立されていません。
正直言って映像の解像度も低く、実際に目で見る世界とはやはり異なります。
ただ、リアルの世界とVRの世界を行き来する未来が、すぐそこまで来ているように感じました。
ライター&キュレーター
小檜山 諒 フリーランスライター&キュレーター
世界中の面白いアイディアを集めたブログを運営中。「問いが変われば、答えも変わる」を信じて、アイディア発想など研究しています。ハッとさせられるようなアイディアが大好物。アイディアデザインコンサルタント。モットーは「LESS IS MORE」