この書籍は、必読かと。「自動運転 ライフスタイルから電気自動車まで、すべてを変える破壊的イノベーション」は、私たちの文明に自動運転がどのような影響を与えていくかを分かりやすく解説してくれる。つまるところ自動運転は、私たち生活、日本の産業、そしてあらゆる事業、マーケティングモデルにまで、巨大な影響を与える。
以下、一部を抜粋して紹介する。
——————————————————————-
・筆者が、自動運転技術の普及を必然と考えるのは、それによってクルマに起因する社会問題の多くが解決するからだ。その主なものを挙げると以下のようになる。「交通事故の激減」「交通渋滞の解消」「電気自動車(EV)の普及によるCO2排出量の大幅な減少」「少子高齢化社会への対応」「物流コストの大幅な低減と人手不足への対応」「駐車場の多くが不要になることによる土地利用の効率化」「緊急時、災害時の対応の迅速化」
・もし、自動運転技術によって、無人トラックが実用化できれば、少子化に伴う人手不足の解消につながり、更に物流コストを半減できる可能性がある。仮にコストが半減できれば、計算上は、卸売業や小売業の営業利益率を2倍以上に押し上げる効果があり、経営に大きなインパクトを与える。
・自動運転者は、疲れているときでも運転しなくていい、面倒な駐車場探しが不要になる、出かけた先でアルコールを楽しむことができる
・クルマを所有せず、必要なときだけ使うという利用形態なら、利用者は、用途に応じた最も適切な車種を呼び出せばいい。高級なレストランに出かける時にはフォーマルなセダンを、夫婦やカップルが2人でドライブに出かけるときには、優雅な2ドアクーペを、郊外のショッピングモールに出かけるときには、気取らずに軽乗用車を、キャンプに出かけるときには、荷物をたくさん積み込めるミニバンを、スキーに行く時には4輪駆動のSUVを使う、というような使い分けができる
・例え、自動運転時代になっても、クルマという商品はコモディティ化しないと筆者は考えている。それどころか、自動運転車が普及すると、現在よりもむしろ、個々の商品の魅力や個性、品質が重要になってくるだろう。
・クルマの利用コストが下がるばかりか、無料になるケースも増えるだろう。「フリーカー」の登場である。理屈は、相応の費用をかけて提供されているにもかかわらず、多くが無料で享受できるネット・サービスと同じだ。将来、クルマは「お客さんを連れてきてくれる広告端末」になるだろう。
・ユーザーが行き先を告げると、その近くにある店やレストランなどをユーザーに知らせてくれる。ユーザーが望めばそれらの場所に実際に連れて行ってくれ、運賃はタダになるといったサービスだ。こうしたフリーカーは店にとってみれば、新規の顧客を確実に連れてきてくれる頼もしいサービスとなるだろう。
・ユーザーにとってもありがたい仕組みだ。どこかで外食したい、買い物をしたいと思ったら、まずこうしたフリーカーを呼べばよい。ユーザーの希望や予算に応じた店を紹介し、場合によっては予約までしてくれる。しかも、無料の送り迎え付きである。
・移動ルート連動広告は、メディア広告を超える市場規模に育つ事になるかもしれない。
書籍「自動運転 ライフスタイルから電気自動車まで、すべてを変える破壊的イノベーション」より
——————————————————————-
これまで多くの人は、自動運転は、自動車業界や物流、交通といったところの問題、と考えていたかもしれない。
しかし、上記にあるような「フリーカー」というコンセプト、また「移動ルート連動広告」というキーワードが出てきたとたんに、あらゆる業界への影響を考慮しなければならないことが分かる。また、自動運転が、これまでにない新たな事業機会を生み出していく可能性も高い。
そして、”送り迎え付き”という買い物スタイルが増えれば、間違いなく顧客の移動距離は伸びる。その時代にリアル店舗、地域経済は、何を考え、どのような対応をしていくべきなのか。自動運転から広がっていく発想は広く深い。