時代が行き詰まってくると、国家はどうしても右傾化しやすい傾向性があります。これは自国の経済を上向かせるという経済的施策の歴史から見ても明らかです。また、もっと言えば、動物でも人間でも追いつめられると「本能的怒り」をもって対処しがちです。そしてそれを人間は理性で肯定化してしまいます。
しかし、これだけテクノロジーの発展した時代に、行き詰まりに対して「怒り」をもって対処したのなら、いったいどのようになってしまうでしょうか。それは、人類文明の存亡に関わる大問題になってしまいます。
ある尊敬する方から書籍「世界で生きる力――自分を本当にグローバル化する4つのステップ」をご紹介いただきました。まさに、21世紀の各人が、腹に落とすべき教科書だと思いましたので、こちらでも一部ご紹介させていただきます。
この書籍には、シティズンシップ(市民性)の5段階が示されています。
最初の段階は、「自分のこと」だけに注意を向けるシティズンシップ1.0。そして次の段階は、自分たちの「グループ」のことを考える2.0、また「国全体」に共感できるナショナリズム型の3.0へと進んでいきます。
社会が行き詰まると、どうしてもこの段階に止まってしまいがちです。しかし21世紀私たちは、本格的に次の段階を目指さなくてはなりません。
それは異文化に共感するための経験や創造性を持ち、自国や民族の枠にとらわれない4.0の段階です。そして最終段階として、すべての生命や地球そのものを視野に入れた思考や行動ができる5.0へと進んでいきます。いま社会は、この4.0から5.0を価値観の基底部とする人々が増えていかなくてはいけません。
ちなみに、下の図はシティズンシップの段階を上がるために、超えなければならない価値観の壁を示しています。
いかがでしょうか。今こそ私たちは、未来の子供達のために、より広い視野を持って進んでいかなければいけませんね。
同じ「人間」として地道にコミュニケーションを取り続ける
photo credit: Aaron Escobar via photopin cc
例えば、核兵器を「力による均衡」という視点から必要悪と認めてしまう核抑止論の底流に流れる暗い衝動とは何か?
それは、他国、他民族のことを信じられないという「漠然とした恐れ」にこそあると私は思っています。
では、その恐れを払拭していく方法とは?それは、地道ではあるけれども、絶えざるコミュニケーションにあると思っています。しかも、その視点は、国家、宗教、民族の壁を超えて「同じ地球という惑星に住む『人間』」としてのコミュニケーションです。
とある著名な経済人が、あるアーティストが脱原発について語ったところを「アーティストはそれでいい!」と一蹴した場面がありました。しかし、どの業界、分野でも本当に尊敬される世界的な方々のコミュニケーションをじっくり見ると、時に祖父母の話、時に子どもの話をしながら「人間としての共通項」を見いだしコミュニケーションをとっています。
もし、経済人、アーティスト、日本人、中国人という枠でコミュニケーションをとっていくのなら、突き詰めていくとそれは、お互いの違いへと焦点が向かい、共感、共鳴のコミュニケーションは生まれにくいでしょう。
書籍「世界で生きる力」には、これから重要視される能力として次の4つの能力をあげてます。
直視する力‥‥ものごとの本質を捉える力
学ぶ力‥‥あらゆる世界観を学習する力
連帯する力‥‥異なる世界の人々とつながりあう力
助けあう力‥‥世界をより良く変えるためにともに行動する力
まさにこの力ですね。批判しあうのではなく、尊敬しあえる関係を構築し続けること。これが私たち21世紀に生きる人類にとって、最も大事なことの1つだと思っています。
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