以前、紹介したクラウドソーシングワインは、インターネットの仕組みをふんだんに利用したものだったが、こちらのクラウドソーシングビールは、リアルな取り組みだ。
【参考】
・クラウドソーシングでワインを作る!「コロンビア·クレスト」が、誰もがワインメイカーになれるプロジェクトを開始
皆でビールのホップを栽培しビールを作って、それを飲む。ビール醸造メーカーMeantimeが行う、市民を巻き込んだビール作りの事例が興味深い。
年の始めに、ロンドンのセント·ジェームズ·パークや自然歴史博物館、また市内のパブの屋根やバルコニーにホップを植える。これらを収穫して、醸造して飲むというクラウドソーシングビールは、私たちに様々なアイデアを閃かせてくれる。
大手メーカーの作ったビールを飲むことも良いだろうが、自分がビール作りに参加するという行為が入れば、その味と体験はまた格別なものとなるだろう。
市民のための新時代の”祭り”であり、地域活性化の一手としても注目されていきそうだ。
クラウドソーシングの最も背後にある価値観
PHOTO: a young father and his two children from Shutterstock
クラウドソーシングという言葉は、今や社会に広く普及し、あたかもこの世の春とばかりに謳歌し始めている。
しかし、その概念は単にネット上だけの世界観のように思われていて、また、”仕事のみ”の文脈において、それは語られがちだ。
一方、広義におけるクラウドソーシングの最も深いところに根ざしている思想は、一人一人の尊厳の確保と、誰もが自己肯定感を持って生きられる社会の構築である。
今回のクラウドソーシングビールの取り組みもそれを思わせる。みんなで作る、一人一人が貢献するという文脈の中で作られる”リアルな何か”は、新たな関係性と平等な世界観をカタチ作る。
それは、地域のやりたくない草刈りが増える、つまり、やりたくない地域行事がまた1つ増える、という意味合いでは決してない。週末の夕日を、今日への感謝と明日への希望と見るのか、明日から始まる嫌な一週間のカウントダウンと見るのか、それと同じ意味において、全く違うものである。
どこまでもこのトレンドは、”市民の市民による市民のための”クラウドソーシングであって、そのカルチャーは21世紀の土壌に深く植えられていくことになる。私たちの生きる21世紀は、今よりもはるかに明るいのである。