一級の肖像画を、愛する人にプレゼントする。そんなカルチャーが生まれてくるかもしれない。
英国発の「Fabulousnoble」は、自身が選んだアーティストに、肖像画を描いてもらうためのサービスだ。
まずは、次のように並ぶアーティストの作品から、好きなテイストを選ぶ。
作品をクリックすると、そのアーティストが描いた他の絵を見ることをできる。アーティストを決めたら、次に肖像画に描く人数やそのサイズ、またキャンバスの素材を選択する。
続いて、描いて欲しい肖像画の写真をアップロードする。そこから実際に描き始めてもらうわけだが、下書きなどを依頼者がチェックし、お互いのイメージ擦り合わせながら、完成まで進めることができる。
気になる価格は、依頼するアーティストやその条件によって300ポンドから1,500ポンドほどの幅がある。日本円にすると、5万5千円から28万円程度だ。
これまでの似顔絵イラストというものを超え、本格的な肖像画をプレゼントするトレンドが生まれてくる。
時代に影響を受けるアートとその深化
PHOTO: Lovely Monet type garden from Shutterstock
アートは、常に時代と共に変化する。
あの印象派の絵でさえも時代の影響を多分に受けて誕生している。それは、産業革命であり、写真の登場だった。対象そのもの書き写すというよりも、一旦その対象を自身の中で壊して、光りと個人の知覚によって再構成したものを描き現していったのだ。
また、心理学の発展における無意識層の発見は、そのまま芸術にまで至り、シュルレアリスムという分野を生み出した。
さて、これからの芸術もこれまでと同じように21世紀の社会から影響を受けながら深化していく。その化学反応から誕生していくトレンドの1つが、紹介したような肖像画の民主化なのだろう。
16世紀、西洋では、”個の確立”とともに、セルフポートレート、自画像の芸術が生まれた。その最初は、あの有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの自画から始まったとも言われ、ゴッホの自画像は、誰もがそのイメージを脳裏に焼き付けている。
しかし、こういった芸術の類いは、これまで、ある種特別な存在だった。市民の生活からは、かけ離れたところにある憧れだった。しかし、ご紹介したようにギフトマーケットと融合しながら広がる肖像画の民主化は、この領域に新たな火を灯すことになる。
21世紀は個が益々エンパワーメントされる時代だ。団体、組織というよりも、個人に平等性の光りが当てられていく社会となる。その象徴のカケラが、肖像画の民主化であり、Fabulousnobleのようなサービスなのだろうと思っている。