これから必要とされるクリエイティビティとはどんなものなのか? 建築を例に、ちょっと考えてみよう。
個人的なイマジネーションだったり、世界的に共有される時代精神だったりと、対象はいろいろだが、建築は常に「想像したかたちを、現実の物質としていかに実現するか」という挑戦だった。
想像力の昇華という意味では、国立競技場の設計案が話題になったザハ・ハディッドを思い浮かべるとわかりやすい。
彼女は、アンビルト(Un Built)、つまり、実際に建つことを前提としない建築を、主にドローイングを通じて提案する建築家(現代美術家)だ。
一方、全球的に共有される問題意識を整理し、物質的な空間へと力強くまとめあげる建築の例は、最近だと、BIGによるGoogleの新社屋がピンと来るかもしれない。自然にも社会にも、環境への配慮を最大限考慮した機能設計が軸になっている。
どちらの場合も、実務的には、驚くべき形を現実のものにするための”技術的なノウハウ”が建築家の競争力だった。言い方をかえれば、”実現できる程度の想像力”を働かすこと、がポイントだった。
しかし、イマジネーションをたちまち物質化してくれる技術。これにより、建築のあり方も大きく変わろうとしている。
これは、UCバークレイの研究者が実現した、セメントを用いた3Dプリンタによる建築のプロジェクト。美しさはもちろんだが、強度・経済性も実用に足るものに仕上りつつあるという。
頭に浮かんだ理想の空間が、そのままプリントできる。そんな時代に本当に価値をもつのは、どれほどの想像力だろうか? どれだけの飛躍が必要なのだろうか?
技術の発展により、クリエイティビティへの要請がさらに強くなる。既存のプロフェッショナルにとって、重要な転換期に差し掛かっている。