登場すべくして登場しました。21世紀を支える理論の出現です。
パリ・スクール・オブ・エコノミクスのトマ・ピケッティ(Thomas Piketty)教授が発表した書籍「21世紀の資本論」(Capital in the Twenty-First Century)が世界に旋風を巻き起こしています。
過去300年間の調査結果から、これまで主張されてきた「資本主義における格差の拡大はいずれ安定し、ゆっくりと縮小すると言われてきた理論は、根本的に間違いだ」ということが主張されています。
拡大していく格差のニュースが伝えられている中で「え!今更!?」と思われる人もいるかもしれませんが、マルクス後の社会において、理想を語り、平等を声高に叫んでも、それを後押しする理論はこれまでなかったんですね。よって、資本主義万歳!!!だったわけです。
一方で、資本主義が格差を縮めた時期もあります。ただそれは、戦後の一定期間だけであり、その前と最近の1980年代からは、格差は再び大きくなっているとのこと。資本収益率が国の成長率を超える社会においては、常に格差は拡大をしていくことが判明し、このまま行けば究極的にこの差は拡大、固定していくことを示しています。
ポール・クルーグマンはこの書籍をもって「不平等の統一場理論」とまで言い切り称賛をしています。そして、米国では、マルクス本が再び売れに売れ始めています。
ゼロサムゲーム、そして格差を拡大させるだけの現代資本主義の競争に乗ることにうんざりしてきた大衆は、水を得た魚のように熱狂し、今その動きで世界が揺れています。
ピケティ著「21世紀の資本論」のスピーディーな邦訳に期待したいところです。
周囲の苦しみの中、自分だけの幸福を感じられるか?
PHOTO: little girl with sunrise from Shutterstock
先日、富裕層のみで統治される米国の自治体がTV放映されました。世界ではこのようなことが普通に起こり始めています。
しかし、よくよく考えてみれば、自分だけ美味しいものを食べていながら、周りが飢餓にあえいでいたとしたら、本当に美味しく食事できるのでしょうか?「はい、できますよ」と答えてしまうなら、人類文明はもう長くは持たないのでしょう。
きっと多くの人は「隣で苦しんでいる人がいれば、美味しい食卓を囲むことはできない」と答えるのではないでしょうか。
当然ですが、自分のことは大切です。そして日々の忙しい生活の中では、家族に気をまわすまでが精一杯。これが普通でしょう。
しかし、今のこのタイミングは、私たち一人一人が”新しい社会”について考えなければならない時に来ています。なぜなら江戸から明治への転換、そして戦後の焼け野原から復興した時のように、一人一人が自分ごととして、社会のことを真剣に考えなければならない時に突入したからです。
私たちが今何を考え、どう発言、行動するかで次の世代が生きる21世紀の社会が決まります。
大論争を呼んでいる「21世紀の資本論」ですが、世界をより良く変えるためのこの大議論に、一人でも多くの人が参加されることを願うばかりです。