幸福は人生の目的ともいえます。しかし、資本主義社会を生きる
中では、幸福は目的ではなくなり、「経済」が目的となるような
場面に出くわすことがよくあります。例えば「今期の会社の利益
を最大化しなければならない(株主のために)」という状況が
1つありますね。
しかし、一方、経済を単一の指標とすることなく、国や社会の
目標(社会進歩の定義)を問い直そうという動きが、世界各地で
行われています。
2009年には、英国政府の委員会から、右肩上がりの経済成長がない
世界で、国の繁栄と国民の幸福を達成するための政策ステップを
示した「成長なき繁栄」レポートが提出されました。
フランスではサルコジ大統領の諮問委員会は、従来のGDPを見直し、
幸福の指標を導入することを薦める報告を出しました。日本でも
2010年末に閣議決定された「成長戦略」に幸福度指標を作成する
旨が盛り込まれ、2011年末に内閣府から幸福度指標試案が出され
ました。
先進国と呼ばれる国々は、経済的な豊かさを表す GDP の上昇が
心の豊かさを表す幸福感に結びついていないとする「幸福のパラ
ドックス」に頭を悩ませています。
下記は日本における幸福度の推移です。日本でもGDPは
上がっても幸福度に関しては上がっていません。
このような結果、経済学、経営学、心理学、社会学などで少し
ずつですが幸福の研究がされていくようになりました。
一方、このように「幸福学」の研究が進むにつれて次のような
意見を多く聞くようになりました。「幸福の議論によって、我々
は経済成長を諦める理由とはならない。むしろ教育や技術革新、
起業や競争力の分野で、経済成長を促す正しい政策を考え出さ
なければ、より豊かな社会はありえない」
確かに、幸福は経済と関係しています。よって経済を無視した
幸福の議論はありえません。しかし、幸福の追求は本当に経済性
の足かせとなってしまうのでしょうか。
心理学者のソーニャ・リュボミルスキー氏、ローラ・キング氏、
エド・ディーナ氏が225件の学術研究について詳細なメタ分析を
試みたところ、幸福感の高い社員の生産性は平均で31%、売上げ
は37%、創造性は3倍高いという結果になったといいます。
つまり、これは幸福と経済的成長は相反するものではなく、とも
に大きくしていくことができるということを意味する1つのデータ
だと思います。
今、私たちは文明は、進化の階段を1つ上がるタイミング にあります。
その中で、一つを切り捨て、一つを活かすという考え方だけではなく
両方を活かすことができないか?という考え方を持つことがとても
大切だと感じる昨今です。