http://www.boomer-livingplus.com/article/watson_shows_its_stuff
2012年12月14日にグーグルは、発明家のレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)氏を採用し、世界的な話題となっています。レイ・カーツワイル氏は音声認識や光学文字認識(OCR)などで業績を残し、1999年には「アメリカ国家技術賞(National Medal of Technology)」を受賞している著名な発明家です。
そして、何よりあの「技術的特異点」(シンギュラティ)を世界に知らしめた人物でもあります。2045年前後に、コンピューターはついに知性の領域においても人間を超え、もはやそこからの技術発展は、人間には予想できない領域に入る。そのポイントが技術的特異点です。
グーグルの狙いは、やはり「高度な人工知能」。レイ・カーツワイル氏の入社は、これからこの分野に更に注力していくことを示唆しています。
2011年、米国のクイズ番組「ジョパディ(Jeopardy)」で人間の歴代チャンピオンに勝った、IBMのクイズ解答コンピュータ「ワトソン」。日本でも有名になりましたが、こちらは現在、医療アドバイザー・ロボットとして転用が進められています。あの投資家ウォーレン・バフェットのIBM株購入の経緯も、この辺りの動機が強いようですね。
そして今、Technology will replace 80% of what doctors do(医者の仕事の80%はコンピューターにとって代わられる)といったことも、まことしやかに語れるようになってきました。
以前、「自動薬剤管理システム『PillPick』」をご紹介しましたが、時代は明らかに「知性」を外部化する方向へと動いています。
知性は外部化され、倫理は再び内部化される
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私たちは、ここ数十年、働いて得たお金の一部を税金で納め、それが回り回って社会保障として使われていくことを良しとし、それを唯一の答えとして追い続けてきました。昔は、子どもや家族が年をとった親の面倒をみることは当たり前でしたが、今は、親を老人ホームにいれることは当然の手段の1つです。つまり、自分たちがお世話するという倫理を外部化していったのです。
しかし、この「倫理の外部化」が、現在の金融システム及び貨幣経済の限界により、思うように成り立たなくなっています。つまり、私たちは再び倫理を内部化することを迫られているのです。
そして、家族や地域のコミュニティーを高度に復活させることによって、関係性を再構築し、21世紀型の幸せな生活について考えていかなければならないタイミングに来ています。そして、ソーシャル・ビジネス、NPOなどの必要性が問われるのも、この倫理の外部化の限界がもたらしているものです。
一方、今、知性は外部化していっています。ワトソンやPillpickの事例もそうですが、人間しか行えないとされてきた思いもよらない知的労働すら、ロボットが行うようになっていきます。人間しか持っていなかった知性をコンピューターがいよいよ持ちはじめ、知識や知恵は、すごいスピードで外部化されていきます。
現時点でも、スマホを持っている方は、それを肌身で感じているのではないでしょうか?ちょっと困ったことがあったら、すぐにスマホで調べる。まさに、知識や知恵がどんどん外部化されている象徴ですね。
この大変化する社会の中で、私たちは人生や働き方を考えていく必要があります。しかし、私はこれは絶望ではなく、むしろ希望への道だと思っています。人間がより人間らしく生きられる時代が始まるのです。
例えば、今、フェイスブックやグーグルは「いいひと」(Good natured person)を雇おうとしていると言います。天才やスキルが高い人は、数十億人いる世界中の人の中から優秀な人間を選びアウトソースすればいい、という考え方です。
これは、これから全ての企業、コミュニティーで進んでいくことだと思います。つまり、機能はアウトソースし、理念に共鳴した楽しく働ける人たちと一緒に働いていく、という未来です。つまり、「人間が再び、機能や能力よりも人格によって評価される時代になる」ということです。
現在の社会は、産みの苦しみで、一見厳しいことも多いですが、それでも社会は着実に良い方向へ歩みを進めています。