均質化し、テクノロジー化するマーケティングやPRにリアルの風を。
「Mir Restaurant」は、洗剤メーカーMirが行う興味深いポップアップレストランだ。パリのレストランを借りて、美味しい料理を提供する。そして、食事後の支払いは「お金」ではなく、「皿洗い」で支払ってもらう。
借りているお店は、このような雰囲気の良いレストラン。前菜、メインディッシュ、デザートを注文する。
食後は、洗うべき食器の種類と数が次のように書かれている。皿が2枚、フライパンが1枚、フォークやスプーンを6本、鍋を1つ、グラスを2個。
食器洗いは、もちろんMirの洗剤で行う。洗剤の良さをPRできるのと同時に、外食先で皆で皿洗いという人生にない経験をすることができる。
忙しい時は無理だろうが、1度は試してみたい、という人も多いのではないだろうか。経験した人の口コミネタとしても素晴らしいし、世界中のメディアで取り上げられていきそうだ。
マーケティングに経験を利用する時代
PHOTO: Young boy performing experiments from Shutterstock
時間を使ってもらうということは、体験してもらうことだ。
インターネット時代、反動的に私たちが強く望むことがある。それは、100%の経験だ。
テクノロジーやインターネットの特性は、元々持っているリッチな関係性を排除することで情報化した経験を、高速に流通させることに成功した。
例えば、そこにある経験を映像にし、Youtubeにアップすることで、本物の体験の何十%かの満足を世界にばらまくとこができるようになった。
このように、情報化・単純化・抽象化という文脈に乗せて流通させていくその構造から漏れ落ちた、”100%の何かを経験すること”を人々は無意識的に求めるようになっている。
今回のマーケティング方法も、そんな経験をベースにした面白い取り組みだ。何か面白い、したことのない経験は、私たちの意識を惹きつける。
体験をベースにマーケティングをエンジニアリングする。このようなトレンドは益々広がっていくことだろう。