先日Yahoo!ニュースに「ボリュームゾーン不況」というキーワードが現れて、世間を賑わせた。
一般的にボリュームゾーンの商品というものは、安価なものを大量に供給するという考え方が基本です。ひとたび人気が出れば、それは定番商品となり、長期にわたって企業に利益をもたらします。どの企業もボリュームゾーンのロングヒットを狙って、商品やサービスの開発を行ってきたわけです。
しかし、最近この傾向に変化が見られるようになってきました。人気商品が出ても、そのブームはすぐに終焉してしまい、なかなかロングヒットにつながりません。
端的に言ってしまえば、「1つ1つの商品寿命が縮まってきている」ことを言っているが、これからその傾向は、更に極まっていくに違いない。ネットで流されるニュースが、あっという間に消費され、次の日には忘れ去られていくように…。
今、経営も、その基本的な考え方をリデザインしなければならなくなっている。その中心コンセプトの1つは、商品は基本、「関係性を軸にして、開発・流通・販売・フォロー」されなければならないということだ。
こう聞くと、大手にとっては嫌なこと限りない。関係性の重視は、その月の売上げをいかにあげるのか?という経営課題から考えれば、面倒くさいこと極まりないからだ。確かにそれは、小さな企業の戦略であって、大手が行うことではなかった。しかし、ビジネスそのものが「ギャンブルの様相」を強めていくに当たって、もはや関係性はどの規模の会社でも無視できなくなっている。
ここで言う「ロングヒット」というのは、関係性の中にある時代なのだ。
関係性を生み出すコンテンツの大ヒット
例えば、最近の「ラッスンゴレライ メーブメント」は、まさに社会に「関係性」を生み出していき、爆発した。リズムそのものがウケ、それを多くの人達が真似をした。それを観て語る。まさに、「コンテンツ」が社会に広く関係性を生み出したのだ。
とある映画プロデューサーが、「最近は当たる映画と当たらない映画の差が激しい。もっと観られてもいいと思っているコンテンツがなかなか観られない」という話をしていた。コンテンツ単体が良い、悪い、ということはもちろんだが、そこから関係性が生み出されていくかどうかが、重要になる。アナ雪の大ヒットは、あるところから「日本的お祭り」の様相を呈し、人々のコミュニケーションを滑らかにした。
売れるという結果ではなく、自然に売れて行く状態にフォーカスする
一方で、「そうか!関係性を作ることだな!」と思い、製品やコンテンツを作って、PRを強化することは答えではない。それでは、結局一発屋の罠から抜け出せない…。
「開発・流通・販売・フォロー」までの関係性をデザインすることこそが大切である。もっと言えば、それは「売るという『結果』を追う」ことではなく、「関係性を軸にして、自然に売れていく『状態』を作り上げる」ことに集中することが大切になる。「結果」と「状態」では概念そのものが違う。
今、社会構造が大きく変化している。それは「原因と結果の方程式」が変わりつつあることを意味する。ましてやテクノロジー社会、急進するグローバル化の中で、「Aを入れれば、Bが生まれてくる」というものが、「Aを入れるとCが生まれてくる」というように、瞬間的に変化する。
そして私たちは、グローバル化、ロボット化の文脈の中で、日々短期的視野の中で焦らされている。「もう日本は終わりだ」「ビジネスは益々競争が厳しくなる」そんなことをいわれ続けてきたが、もうこの言葉にリアリティはない。皆、そんなことはとうに分かっていて、このメッセージが、心に差し迫ってくることはもはやない。
よって、次の時代の構造そのもの、システムそのものを冷静に、中長期手的に見つめる必要がある。これからは、「軸となる関係性」を、反自動的に強化していくシステムデザインこそが大切だ。「売る」という結果重視の思考ではなく、「売れていく」プロセスの中に、これからのリアルがある。
一方で、関係性のデザインというと、つい昔ながらの「商い」という方向性に目が向いていく。しかし、古典的商いが、昔の状態で復活するわけではない。現代のテクノロジーやツールを取り入れたカタチで高度に復活する。
先日、木の修理部屋を設置したパタゴニアのクルマが、服を修理するため全米を回るキャンペーンを紹介した。顧客は、無料でパタゴニアの服を修理することができる。
【参考】
・時代の先を行くパタゴニアに見るこれからの「コミュニケーション(マーケティング)デザイン」
これはまさに、パタゴニア流の関係性のデザインであるが、「モバイル修理工房」という現代の文脈にのせている。経営のリデザインのための1つの鍵は、この関係性再構築の中にある。
【クエスチョン】
・関係性を軸にした、次世代経営モデルを模索しよう!そのために、まずどういった一歩を踏み出すべきか、ざっくばらんに話し合ってみよう!