東京商工リサーチが、「2012年の希望退職募集がは1万6,779人を数え、すでに前年(8,623人)の1.9倍となった」と報じました。
募集人数が1万5,000人を超えたのは、リーマン・ショックの影響が広がった2009年(2万2,950人)以来とののことで、このままいくとリーマンショックと同水準にまで伸びる可能性があるようです。
上の図にあるように、2002年は、ITバブル崩壊の余波が広がり希望退職者が増えました。そして、2009年はリーマンショックにおける金融バブルの崩壊が主要因で、希望退職者が増えました。
しかし、今回の希望退職者が増えている背景は、今までと同じ「バブルの崩壊」という要因ではない、という点が大きなポイントです。
製造業における事実上のリストラが大きな要因の1つとなっているわけですが、言って見れば、社会構造、産業構造の転換が進んでいる象徴なのです。
増え続ける「大企業」の存続コスト
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「世の中をこんな風に便利に、豊かにしたい!」「社会のこんな問題を解決したい!」「世の中に、自分たちが惚れ込んだこんな製品、サービスを届けたい!」今までは、こう思ったのなら「企業」が最も効率の良い方法でした。
しかし、情報革命によってオートメーション化が進み、また検索エンジンで、必要としている人から自分たちを容易に見つけてもらえるようになりました。そして、ソーシャル・メディア革命により、簡単にネットワークを構築、維持することができるようになったのです。
この中で、既存の大企業は「スピードの欠如」「コミュニケーションコストの増大」「大きな固定費」が足かせになって、存続コストが増大しています。
つまり、細かなネットワークと小さな組織が巨大なピラミッド型組織よりも優位になる点が多数出てきているわけです。
そんな話をある経営者にしておりましたところ「それでは、安心して仕事をすることはできないのではないですか?」と言われました。つまり「企業という組織でやるからこそ、失敗しても給料をもらえるのだ。それがなければなかなか安心して、チャレンジできないでしょ?」ということです。
現段階では、もちろんそういった側面はあるでしょう。しかし、お伝えしたいのは、その失敗すらも極限的にローコストになり始めている、ということなのです。
例えば、新商品をソーシャル・メディアやクラウドファンディングで発表し、欲しい!という人が少なければ作らなければいい、と言う話なのです。
そして、もう一つは「企業が、セイフティーネットとしての雇用を守らなければならない!」という発想自体が通じなくなってきている側面があります。存続コストが高くなっている企業にとっては、人件費という固定費は非常に大きくのしかかるわけです。
では、どうすればいいか?というと、企業だけではなく、社会保障を含めた社会全体でセイフティーネットを作っていくことを考えなければならないということです。例えば、ベーシックインカム的な制度も含めてですね。
いつも言うように、「(大)企業とは何か?」が問われている時代です。
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