非常に重要な一歩です。各所で話題になっていますが、AmazonがKindle Fireタブレット向けに“Amazonコイン”と呼ばれる仮想通貨を発表しました。今年5月より米国で開始されます。
Amazonコインは、Kindle Fireからアプリやゲームに使える仮想通貨で、決済時には、クレジットカードのリアルマネーだけでなくAmazonコインでも支払うことができます。
1Amazonコインは約1セントで、Kindle Fireタブレットの利用者は、Amazonコインを適時購入できます。100Amazonコインは約1ドルで購入できるという感じですね。
子供達がアプリやゲームをする時、親がAmazonコインを購入し、使用限度額を決めておけば、使い過ぎ等のトラブル防止にもなるとしています。もちろん、Amazon側としてもコインはAmazonのアプリストア内でしか利用できないので、アプリ等の購入とリピートを促進できるといったメリットがあります。
しかし、これはAmazonが業績をあげるために、アプリを購入するための仮想通貨を発表した!という単純な意味だけではないと考えています。
つまり今後、AmazonはコインでAmazonのストア内の書籍や商品等を買えるようにしてくる可能性があります。この流れの中に、現代の大きな注目ポイントがあります。
現実味を増す”評価と仮想通貨のリンク”
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ビジネスを見てみれば、当然のことながら商品・サービスと金品の交換の際には、同時に「見えない資産」つまり「評価」というべきものの交換が行われています。インターネット以前は、これを可視化することはなかなか難しく、”リアルな評判”や”贈与”といったもので表現することが限界でした。そして、そこには空間的な限界が自ずと存在していました。
これが、インターネットの登場によって、見えない資産、評価がより分かりやすくなりました。それはアクセス数であったり、いいね!の数であったり、リツイートの数といったものです。しかも、いつでもどこでもその人の評価を見ることができるという意味で、空間的限界は完全になくなりました。
また、これまでインターネットは貨幣との直接的とも言える結びつきによって、大きな損害を与えることが多くありました。それは「お金でお金を買う”金融業”の暴走」であり、金融資本主義とも言える社会の誕生です。昨今のリーマンショックは、そのトラブルの最たるものでしょう。
しかし、インターネットとリアルマネーではなく、インターネットにおける”評価と仮想通貨の結びつき”というものは、今後人類にメリットを与える可能性があります。
現在のインターネット上の「評価」というものは、それを直接的に「貨幣」に結びつけようとする場合、それは商品、サービスを販売したり、広告などの手段を取るしかありません。例えば、GoogleはYoutubeの再生回数をほぼ”通貨”と同じ意味で捉えている節があります。ただ、Googleはその再生回数を、広告という手段を通じてリアルマネーに変換させているのが現状です。
しかし、今後の仮想経済圏の膨張により、インターネット上で可視化されやすくなった”評価”が、直接的に”仮想通貨”とリンクしてくるという現象が起こる可能性があるのです。
つまり、こういうことです
現代:評価→広告(ビジネス)→リアルマネー→商品の購入
近未来:評価→仮想通貨→商品の購入
ここが現代の大きな注目ポイントです。
例えば、Facebookのいいね!がAmazonの1コインとリンクを始めるなんていうことが起こり始めたらどうなるでしょうか。様々な課題がありますので、ここで細かな思考実験を書き連ねることは控えますが、そのようになっていく可能性が少なくともゼロではないということです。
そして、実はこのような考えを今一部の人達が考えており、いつから始めるかとウズウズしている状態です。
21世紀は、貨幣経済圏、評価経済圏、そして仮想通貨(地域通貨)圏が高度に融合をする新しい金融システムが構築されていくことでしょう。
いつも記事で書いているように、情報革命やロボット革命、グローバル革命が押し進められていく中で、モノの値段はどんどん下がります。生きるために最低限必要なものは、かなり安くなるはずです。
そうなると、評価と仮想通貨というもので最低限生活に必要な物が購入でき、生活できてしまうなんていう可能性も出てきます。現代において、もの書きで食べている人というのは、本当に一握りです。しかし、モノの値段がどんどん下がっていった時、もの書きで食べていける人は増えていくはずです。
山で農業をしながら、自分たちで食べるものの多くは自分たちで作る。それらの日々をコンテンツ化し、インターネット上にあげる。そこで集まる評価を、Amazonの仮想通貨に換金し、生活に必要とするものを購入する。そして、自分が突き詰めたい”世界一飲みやすいコップ”を3Dプリンタで作り、世界で勝負する!なんていうパラレルキャリアが可能になってくるということです。
あと数年もすれば、このような流れが本当に起こるのか、ただの空想にすぎないのかがはっきりと分かってくるでしょう。しかし、私は、少なくとも今進んでいっている方向は、このベクトルであると感じています。一言で言えば、”お金の民主化”という方向です。