「すごい!クラウドソーシングとデジタルファブリケーションによって発明を再発明したQuirky(クワーキー)」の記事を書いたところ、Wemakeの山田さんからご連絡いただき、お会いしました。20代の若き起業家です。
説明を聞いていると、Wemakeはまさに日本版Quirky。アイデアを、クラウドソーシング・デジタルファブリケーションなどを利用し、皆で製品を開発していきます。
数日内にβ盤オープン予定。まずは、アイデア投稿ができるようになるようです。
Wemake
またWemakeのモデルは、記事として予測した通り、まさに「少量生産が得意な国内の町工場と密接に連携を取りながら、必要なところは、発展著しいクラウドソーシングを利用するビジネスモデル」となっています。
重要なサービスとなると思っていますので、今回詳しくご説明します。
まずは、アイデア投稿について。Quirkyの場合、アイデアをコミュニティーに評価してもらうということ自体に手数料10ドルがかかりますが、Wemakeはしばらく無料とのこと。
ちなみに私の方で、「アイデアはどれくらい集まりますかね?(ダイジョブですかね?)」と話をしたところ、見せていただいたデータが次のもの。
・発明学会主催のコンテストには、一年で1700点のアイデアが投稿されている
・知的財産の個人出願件数は、2010年度で特許が1.3万件、実用新案が4千件存在する
結構いらっしゃるのですね…。
評価アイデアを投稿した人は、分配される利益のうち38%が入ります。このパーセンテージをWEMAKEでは、MAKE POINTと呼びます。
続いて、WEMAKE内のコミュニティーにより、評価が行われます。基準は「新規性・有効性・実現性」の3つのポイントから。そのアイデアに対して良い提案、コメントをしてくれた人には、最大6%が分配されます。また、投票者に関しては、5%から分配されたMAKE POINTを受け取ることができます。
30日間のコミュニティーによる評価を得て、見事高い評価を得られたものは、WEMAKEスタッフによる審査段階へと移ります。審査に通過しなかったアイデアに対しては、簡単な評価レポートをもらうことができ、次の投稿に活かすことができます。
その審査を通過すると、いよいよプロトタイプの作成段階へと移ります。アイデアの市場調査のために、アンケートに答えてくれた人には、5%から分配されたMAKE POINTを受け取ることができます。
また、アイデアへデザインを投稿し、採択された場合20%の分配を受け取ることができます。投票したデザインが採用された場合、2%から分配されたMAKE POINTを受け取ることができます。
更に、アイデアに良いと思うネーミングを考えた人には、4%のMAKE POINTが獲得でき、投票したキャッチコピーが採用された場合、2%から分配されたMAKE POINTを受け取ることができます。
そして、コピーライティングフェーズ。キラッと光るコピーライティングを提案し、採用された場合には、4%の分配金。またその採用されたキャッチコピーに投票した場合、2%から分配されたMAKE POINTを受け取ることができます。
最後ですが、製品の色と素材に投票し、投票した色と素材が採用された場合には、2%から分配されたMAKE POINTを受け取ることができます。
次は、試作・量産・販路開拓フェーズ。ここは、製造をしてくれるパートナー企業とWEMAKEスタッフによる作業です。
続いて、クラウドファンディングにおける事前購入を開始します。ここで集まったお金をもって、実際の商品化を進めます。また、小売店への販路開拓も同時並行でおこなうとのこと。
そして、Wemakeが提携をしている日本の中小製造業、町工場にて、正式に販売する製品を作るフェーズ。
販売開始。
最終的に、利益に応じてMAKE POINTが分配されます。ちなみに、収益分配についてですが、基本、Wemake:コミュニティー=1:1とのこと。
ただ、Wemake側の取り分とコミュニティ側の取り分は、プロダクトの原価や生産方式、販売方法によって多少変動があります。それはそうですね、デザインが投稿されない場合は、Wemakeが自社でデザインを作るという方法をとりますので、この辺りはケースバイケースです。
あれ?これ全部足しても90%なんですけど?と疑問をもったので、山田さんに確認してみますと、10%はセールスフェーズに振り分けられるそうです。つまり、アフィリエイトのように、 プロジェクトページのリンク経由での 購買があった場合、拡散してくれた人に収益が分配されます。
そして、ちょっと気になるQuirkyとの違いは、大きく次の3つ。
・Quirkyはメーカー、Wemakeはプラットフォーム
→Wemakeはプラットフォームであり、メーカーとなるのは参加してくれるパートナー企業です。つまり、製造元パートナー企業、販売元Wemakeというモデルです。ブランディングの難易度は多少高くなりますが、Quikryより多様な商品ラインナップを実現できるとのこと。また、商品を製造する企業や町工場が自社製品を作ることができる!ということにもなります。中小製造業、町工場活性化モデルでもありますね。
・高付加価値・高価格な製品ポートフォリオ
→Quirkyは、生活雑貨を中心に製品化してきていますが、Wemakeは、高付加価値な工業製品や、斬新で尖ったコンセプトのハードウェアを中心にすること。商品数は少なくなりますが、一つ一つが影響力のある製品としたいとのこと。イノベーティブな商品を生んでくれるか、期待大。
・2次創作の推奨によるプロダクトの継続的開発
→きましたね、ザ・次世代。クリエティブ・コモンズ・ライセンス(以下CCライセンス)をサポートしています。つまり、アイデア投稿者以外のユーザーは、CCライセンスのついたプロダクトを改変して、2次創作物として再投稿できます。アイデア投稿者自身がプロダクトを改良せずとも、コミュニティメンバーが勝手に継続的に、プロダクトを進化させてくれる可能性があります。
21世紀の新しい働き方の1つを提示できるか?
上の写真はピボットパワーという商品。見ての通りたこ足がくねくね曲がり、机などの足に巻き付けることができ、かさばらないデザインになっています。
こちらはQuirky経由で作られた製品でアイデアを出した人は、これだけで5,600万円の収益を受け取ったそうです。
山田さんと話していて印象的だったものの1つは、大手電機メーカーの社員が、「私たちは、良いデザインを上に提案している。でも、全て上で潰されてしまうんだ…」といった話を聞くということです。
今回、Wemakeのコミュニティーは、業界分野を問わずあらゆる人達ですが、企業に所属するデザイナーやエンジニア、クリエイターなどを含めて、どれだけの人が関わってくるかが注目ポイントです。
また、私が共感したWemakeが描く未来像に、「自分のやりたいこと、得意なことで生計を立られる社会」というものがあります。まさにパラレルキャリア時代のインフラ的事業モデル。ここ、かなり期待しています。
これからの大きな事業は次世代インフラ作り
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今や経済の中心の1つとなっているインターネット事業の第一世代はソフトバンクの孫正義さんを代表とする世代です。そこから第二世代のサイバーエージェントの藤田晋さん、ライブドアの堀江貴文さん、第三世代、76年世代(1976年世代)とも呼ばれるGREEの田中良和さんやmixiの笠原健治さんと続きました。
ここを、20世紀型のパワーによって押し進められた勢力と捉え、あえて150年前の江戸時代の徳川勢力に当てはめてみます。
そして、ここにそのアンチテーゼとして82世代(1982年世代)が登場します。ここには、社会起業家第一世代です。マザーハウスの山口絵里子さんやかものはしプロジェクト村田早耶香さん、フローレンスの駒崎弘樹さんなどです。ここはまさに、維新志士世代と言えましょう。既存の価値観に疑問を呈し、人道的文脈で、時代をひっぱります。
今、この世代、またその前後から「政治起業家」というキーワードがわき上がっていることも偶然ではないでしょう。
そして、次の世代は、インフラ的事業を作る世代です。明治時代であれば、渋沢栄一や岩崎弥太郎。彼らは、銀行、鉄道、水道、ガスなどの近代国家のインフラ的企業を作り出しました。また、大学もこの時期に多く生まれています。
現代を当時の流れに当てはめてみるならば、これからの事業の意味するところは、21世紀のインフラ作りなのだと思っています。クラウドファンディングは21世紀の金融のインフラ、クラウドソーシングは21世紀の雇用のインフラ、オープンエデュケーションは21世紀の教育のインフラなのです。
山田さんたちは、もはや「なぜ、社会貢献して稼げないの?」と利益最大化企業 vs ソーシャル・ビジネスという対立構造をジンテーゼで乗り越えています。まさに、21世紀型インフラ事業の第一世代と言っても良いでしょう。
明治時代は、今や生活のインフラと言われるほど浸透している事業の起業ブームがありました。サントリー、NEC、東芝、森永製菓、資生堂などなどの多くの企業がこの時代に創業されています。
今、私たちは「21世紀のインフラ」という側面から、社会に必要とされる製品、サービスを開発、提供するタイミングに差し掛かってきているのです。新時代の本格到来です。
Wemake、21世紀のものづくりのインフラとなるか。応援したいサービスです。