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事業は、「贈与競争時代」に入った。その思いを強くしたを2013年。2014年の今年は更にその色合いを濃くしていくことでしょう。
私は、社会貢献競争という言葉をよく使いますが、その中の「贈与」という概念に絞った話をしていきたいと思います。
さて、贈与競争とは何か?一言で言えば、「お客さん、関係者、社会に何を与えられるか?」というシンプルなものです。
そういうと「これまでと何も変わらないじゃないか。私は本業を通してお客さんに、社会に様々なものを贈与している」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ここで言う贈与競争というのは、その次元を超えたものです。
誤解を恐れずに言うなら、「自分が、会社がやったことに対して、お客さんから何をもらえるか?という損得勘定をどれだけ度外視できるか?」という覚悟も含みます。
どんな事業も簡単には儲かりにくくなってきている昨今、「ビジネスモデルブーム」が一方であります。
しかし現実は、できる限りはやくキャッシュを産もうというビジネスモデル思考で事業を行っていくと、往々にして「利害損得思考」という贈与とは対極にある思考にハマってしまいます。
結果、よい事業であったのに、広がりを見せず周りからもあまり感謝されず、縮小均衡してしまったということが多々起こるのです。
しかし、社会が、事業が贈与競争段階に入っていることを認識すれば、お客さん、社会に喜んでいただくためどのように存続し続けられるかというより深い思考になり、周りも存続し続けて欲しいので、あらゆる形でその事業を支えてくれます。
更に細かく言うなら、「贈与」を通して、どれだけの「評判」を得ていけるかどうか?そして、その結果として「貨幣的な利益」は上がってくると考えることが大切です。
評価経済というトピックがありますが、私はこの評価には大きく「注目」に関するものと「評判」に関するものがあると思っています。注目とはアクセス数であったり、いいね!の数、取材の数など、また評判というのは、関係者が感じている本音であったり、レビュー、口コミ内容などです。
特に大事なものは、注目よりも評判です。どうしてもアクセス数などより可視化しやすい「注目」の方に目がいきがちですが、それよりも「評判」の方が重要だということを認識してください。
そして、贈与を通してどれだけの評判という見えない資本を蓄積していけるか?というところに注力するのです。計量化、可視化しにくい部分ではありますが、ここが本質です。
確かに利益、貨幣が得られないと事業を成り立たせることができない、生活ができない、という場合もあるでしょうから、そこのバランスをしっかり取ることは重要です。それが経営となります。
なぜ売上げがあがらないのか?どうして、客数が減っているのか?こういったことに悩む場合は次の問いを考えてみましょう。
「今日一日、どれだけのものを、誰に贈与することができたのか?」この問いに明確に答えられるかどうか?が大切です。
そして明確に答えられても、まだ、そこにお客さんがついてこないとするならば、まだまだお客さんに与えきれていないとを謙虚に捉えなければなりません。
贈与と評価と貨幣のデザインを
このようなことを言うと、マーケティング思考の中で「フロントエンド商品とバックエンド商品の議論でしょ?」という風に思う方もいるかもしれません。
しかし、それとは全くもって違うものです。フロントエンド商品とバックエンド商品という概念は、「お客さんをコントロールしよう」というある種の操作主義的な思考の中で行われていくものです。
その操作主義的な背景を、敏感で繊細なお客さんは見事に感じ取ってします。それは難しいな〜…と思われる方もいらしゃるかもしれませんが、それが現実なのです。
贈与競争という文脈から考えると、マーケティングというよりもむしろ「何かを与え続け、お客さんを社会をより良くしていこう!」という強い覚悟に、人が惹き付けられていく流れだと認識する方が正しいでしょう。
上に示した図は、「贈与」「評価」「貨幣」の優先順位の図です。これまでは、貨幣が最優先順位でした。どれだけお金を速く稼げるか?というところを現代資本主義は突き詰めてきたわけです。
しかし、評価、そして贈与こそがこれからの最重要課題となります。この辺りをしっかりと見つめていかなければ、目に見える貨幣はすぐに行き詰まってしまうことでしょう。
考えてみればそれはどの視点からも同じこと。
例えば、人間にしても、精神、人間性など目に見えないところの成長があって、結果として何かしらの果実を得ることができる。
目に見える旨味ばかりを追い求めて、目に見えないところの成長をないがしろにしていては、結局何かのタイミングで果実を得たとしても、すぐに自分の内面の基底部のところにドスンと落ちてしまい、目に見えるものでさえも元の木阿弥ということになることが多いわけです。
本当にどれだけの深い思い、覚悟を持って、贈与をしていけるのか?その贈与と評価と貨幣のデザインこそが、今経営に問われていることなのです。
【Social Design Newsから本が出ました】
働き方は無限大。
組織や事業の寿命よりも、人が働く時間のほうがはるかに長くなった現代。
テクノロジーの進化と人々の価値観の変化によって、「働き方」が大きく変わりつつある。
メイカーズ、クラウドソーシング、クラウドファンディング、ソーシャルスタートアップ……「仕事の未来」には、無限の可能性が広がっている。
あなたは、どの働き方を選びますか?
さらなる進化を遂げるテクノロジーと新たな時代の価値観が出会ったことで、
これまで考えられなかった(あり得なかった)ような働き方が可能となった。
今、私たちの目の前には、数限りない働き方が存在する。
私たちは、自らの働き方を自分で選び、実行していかなければならない。
それが、本書の言う「ワーク・デザイン」である。 ――「はじめに」より
本書では、これからの働き方の新構造を次の7つのステージで捉えた内容となっています。
・新しい「働く」の価値観
・消費社会から生産社会への潮流
・ワークプロセスの文明的大転換
・組織形態の変化
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現在の「働く構造の進化」は、各ステージをバラバラに見ても分かりません。7つの構造全体を体系的に捉えることで、始めて進化の本質が見えてきます。
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※ライフハッカー[日本版]で本書を大きく取り上げていただきました。
「いま、新しい働き方『パラレルキャリア』が重要だ、と言える理由」