21世紀の「家族の思い出」は、どのように永遠性を保つのだろうか。少なくとも”ソーシャル・メディアのアカウント”だけではないことは確かだろう。
「StoryWorth」は、インターネット上に家族の思い出をストーリーとしてしまい込むサービスだ。
毎週、メールで様々な質問が届き、それに対して返信をするか、電話にて返答をする中で、物語が紡がれていく。それらを丁寧にネット上に保存していくのだが、もちろん、写真などのデータのアップロードも可能だ。
家族アルバムや家系図サービスなどを筆頭に、家族の歴史を残していくサービスは様々ある。しかし、実際の”生の声”をテキストや音声で保存し、ストーリーとしてパッケージ化されるという点、またそれを労働集約的なモデルから切り離そうと試みている点において、この分野の新たな芽吹きをもたらすかもしれない。
作り上げた物語は、PDFでダウンロードもできるし、別途費用は必要だが、このように紙として印刷することもできる。
サービス価格はというと、6ヶ月25ドルのプラン、1年間49ドル、99ドルというプランもある。
個人が力を持つ21世紀、それは、この世から去る日が来た後も、個人が、明快な姿で永遠性を保ち続けるという意味においても担保されていく。
時代が”家族”を希求する
PHOTO: looking at the shop showcase from Shutterstock
私たち個人は、社会的な存在である。多くの場合、顧客への、会社への一途な思いを実現するために、日々せっせと働く。そこでは、現実的に時間と労働力を社会へと提供していき、個人の生はそこで使用されていく。
しかし、家庭というのは、ちょっと違う。疲れた心身を回復させ、人間としての軸を取り戻すための再生産の重要な場である。
しかし、現代のGDP至上主義社会においては、そのインフォーマルな家庭での動きは一切反映されない。コンビニで買う夕食はGDPとして反映するが、家庭内で作った料理は、GDPに換算されることはない。よって、現代における経済社会の文脈において、基本的にそれらは無視される。
時は、経済という海と金融という大風に乗り、いつの日か、”経済的何か”によってのみ、私たちは幸せになれると信じるようになった。しかし、若手を中心に、その神話はもはや働いていない。GDPはどこまでも相対的な数字に成り下がり、未来を描くための数値ではないことを、心の深いところで理解している。
さて、そんな中で、再び家庭というところに光が向かっていく。それは、スポットライトのように突然当たる光ではなく、まさに朝日が上るようにゆっくりとした時間軸で進んでいく。しかし、スポットライトとは違い、その明るさには常に清新さを伴う。
私たちは、今、そのような現実を両手を広げて出迎えようとしている。家族向けのサービスは、これから更に熱い分野になっていくと確信をしている。