最近少し考えていることをコラム的に記述したいと思う。
先日「ディズニーが「人間とは何か?」を新たに問いなおす。21世紀の神話が創造される時」という記事を書いたのだが、それを少し広げたものだ。
さて、これから勢いを持って支持されていくテーマは、「存在論をより直接的に扱い、表現手法はエンターテイメント」なのだろうと思っている。
存在論というのは、「人間とは何か?」「宇宙とは何か?」という問いから発せられるものだ。
先日、とあるところで「これから生まれる新たなエンターテイメントのカタチとは?」というテーマについて考える機会があった。
もちろん手法としては、バーチャルリアリティ等見えているものはある。しかし、その根底に流れる潜在的メッセージとコンセプト、また、それを掴もうとする市民の心はどのようなものなのか、を語れるかが問題である。
昨年世界的な大ヒットをしたアナと雪の女王が発した「ありのまま」というメッセージは、それこそ存在論的だ。
「ありのままの自分を認めよう」
これは、人々の表層的心理というよりも、もっと根源的かつ本質的なアイディンティに関するところにまで響いたように思う。アナ雪は「人間とは何か?」をより明快に直接的に追求する時代へのファンファーレなのかもしれない。
エンターテイメントは、いつも時代に強烈な影響を受ける。戦後、貧乏であるけど元気を出そう!と、黒澤明監督などが映画を作ってきた。それから高度経済成長期のイケイケどんどん!という雰囲気が漂う時には、派手で力強い作品、もしくはロマンティックかつ快活な作品が登場し支持を受けてきた。ハリウッド映画はまさにその象徴だ。
さて、その後は、言わずと知れた人の内面を繊細に描こうとする作品が広がり、昨年のアカデミー賞では、ノンフィクションが多数ノミネートされ、社会性がより強く反映されるものが支持されるようになってきている。
では、これからはどうなっていくのか。
それは、人間の現実的表層とその深層心理といったものよりも更に一歩深いところから、発せられるテーマに惹かれていく。人間の5つの感情「喜び」、「怒り」、「嫌悪」、「恐れ」、「悲しみ」を主人公にした映画「インサイトヘッド」は、まさにそれだろう。
感情の動物である人間を脳科学という背景から、エンターテイメント領域で表現しようとしているのだ。
人々は今、信じるにたる21世紀の神話を求めている。これまで私たちが信じてきたストーリーがことごと崩れていく世界を私たちはにじり歩いている。働く価値観などもそうで、終身雇用と老後の経済的安泰のストーリーを信じている人はもはやいない。
そんな中、急速に進むグローバル化、コンピュータ及びロボット社会の到来で、私たちの存在そのものを脅かそうとする圧力に溢れている。
結果、存在論から発せられる信じるにたる神話を、エンターテイメントという気軽なパッケージで提供された時、それは大ヒットの雰囲気を醸し出す。
この社会的背景を私たちは、常に念頭に置かなければならない。私たちは、このような時代を生きている。