今年の自殺者の数が15年ぶりに3万人を切るというニュースが流れました。
こちらが内閣府自殺対策推進室の「自殺統計に基づく自殺者数の推移」です。赤い線が平成24年の推移ですが、確かに毎月大幅な減少傾向を示していますね。これは2008年の麻生政権時代、3年間で予算100億円投入した「地域自殺対策緊急強化基金」の効果が大きいとされています。
一方、自殺の可能性が考えられる「変死体」の数は増えており、自殺を救済するためホットラインへの相談電話の数は増え続けているとのこと。いずれにせよ、余談を許さない状況であることは変わりません。
今回はそれに関連して、岡 檀氏の興味深い「日本の自殺希少地域における自殺予防因子の研究」の論文についてご紹介させていただきます。
日本の自殺希少地域のに徳島県旧海部町(かいふちょう)という所があり、ここの地域の特徴は次の6つとのこと。
1、コミュニティがゆるやかな紐帯を有しているということ(完全に孤立する人が少ない)
2、身内意識が強くない(皆仲間だという意識がある)
3、援助希求への抵抗が小さい(周囲に助けを求めることへの抵抗感が小さい)
4、他者への評価が人物本位である(肩書きなどでなく、人間性で評価する)
5、意欲的な政治参画を行う(自分にも社会に対して何かできると思っている)
6、主観的な格差感が小さい(それぞれに平等の可能性を感じている)
非常に共感できるものだと思いますが、皆さんはいかがでしょうか。「人間の命は何よりも重い」と感じる私としましても、あらゆる手段を講じて自殺問題解決に手を尽くすべきだと思います。その中でも、自殺を予防する社会的生態系の構築、そしてその価値観・文化を地道に広げ、作りあげていくことこそが最も大切な点の1つであると感じます。
世界を尊敬し、世界に尊敬される自殺希少国日本へ
現代の人類の課題は、戦争と貧困の完全撲滅であることは明確です。
上の画像は、米国の週刊誌「TIME」の2012年12月17日号。表紙は、白地に右寄りな赤い丸。「Japan moves right」とあるように、表紙のデザインは、なんと日本が右傾化していることへの警告です。また、最近は「フランス人の半数弱が『貧困の危険』感じる」という調査の結果が世界的に注目を集めています。戦争も貧困も今や途上国だけの問題ではありません。
よってこれらの問題の解決が急務なのですが、もしこの問題が21世紀中に解決されていくとすると、21世紀から世界的に始まる大問題は「自殺」の問題です。21世紀は、自分のアイディティと余暇時間への対峙が最も重要な課題の1つとなるからです。
日本は少子高齢化スピードが速く、他国に先駆けて21世紀的課題にぶち当たっている社会問題先進国の1つです。日本が先駆けて、自殺希少国への変貌を遂げることができれば、21世紀の世界の大きな希望になることは間違いありません。
世界を尊敬し、世界から尊敬される文化国家日本となれるかは、現代の1人1人の言動にかかっています。
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