現れ始めた「無痛文明」。「身体のよろこび」が「生命のよろこび」を奪う高度なシステムとしての社会

[2015/1/23]
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トマ・ピケティ氏の「21世紀の資本」が放った一閃は、世界に、そして日本においても、巨大なインパクトを広げている。これから各所に、この波紋は広がっていき、この理論的背景を後ろ盾にした大衆は、もうこれまでのように黙っていることはない。より良き社会に向けた変革は、帆を上げて進め始めた。

さて、ここから、次に現れる問題は、無痛文明社会の文脈の中にある。森岡正博氏の「無痛文明論」が発した問題提起は、いよいよ私たちの眼前の問題になろうとしている。

以下、その前提となる重要な文言、問いかけを本文中から抜粋した。重要なので、是非、目を通して欲しい。

・快を求め、苦しみを避け、手に入れたものは離そうせぜ、すきあらば拡張しようとし、他人を少々犠牲にしてもかまわないと思い、我々の人生・生命・自然を予測の範囲の中に収めておこうとする「身体の欲望」

・われわれの文明においては、人間の「身体的欲望」が、人間自身から「生命のよろこび」を奪っているのである。身体的欲望が、生命の喜びを奪う。これが自己家畜化のもっとも深い意味であり、われわれの文明のなかで進行しているもっとも根源的な問いなのである。

・現代文明とは、集中治療室ですやすやと眠っているこのような人間を社会規模でつくり出そうとする営みなのではないだろうか。元気そうに働き、楽しそうに遊んでいるように見えても、実はその生命の奥底でただすやすやと眠っているだけの、そういう人間たちを都市という、集中治療室の中で、システマチックに生み出そうとしているのではないか。

・「身体」が「生命」を奪い取るということ。「欲望」が「よろこび」を奪い取るということ。これが文明の深層構造である。

・では、「生命のよろこび」とは何か。私がどうしようもない苦しみに直面して、その中でもがいているうちに、いままでの自己が内側から解体され、まったく予想しなかった新しい自己へと変容してしまうことがある。このときに、私におとずれる予期せぬよろこびが、「生命のよろこび」である

・それは、自分の内側から古い殻を突き破って、いままで知らなかった新しい自分がありありと生まれでてくるときにおとずれる「ああ、生きていてよかった」という喜びの感覚であり、自分はこんなふうに生まれ変わることができるのだということを知った時におとずれる、すがすがしく風通しのよいよろこびの感覚である。

・生命のよろこびがおとずれるのは、苦しみや、つらいことに直面したときに、そこから逃げようとせず、自分自身のほうを解体し、変容させ、再生させたときに限る。もしなにかの力や操作によって、外部の原因の方を消滅させてしまえば、目の前の苦しみが消えるだけで、自分の方には何もおこらない。ただ安心と安堵が訪れるのみである。

さて、以上を読んでどのように感じるだろうか。初めてこれを意識した人は、その重大さに目をくらませたかもしれない。

バーチャルリアリティやロボットのテーマが、社会において多く取り上げられるようになった。早足で進むこのトレンドは、その可能性に見入られた人々の巨大な生命エネルギーを背景にして勢いよく前進している。

一方で、”このトレンド自体が、人間の生きる喜びを奪っていかないか”という難題に私たちは直面しようとしているわけだ。まさに マトリックスの世界を想像する人も多いかもしれない。

現代社会の中で、起こっている「巨大資本が無制限の格差を生み出し、労働者を搾取する大問題」は、ピケティ氏などが提案する様々な対策によって解決の糸口を見つけていくだろう。

しかし、次には「身体のよろこび」が「生命のよろこび」を奪う高度なシステムとして進化した社会に、私たちはどのような対応をしていくのかという大問題が待っている。この問いをどのように考え、どう対策を打っていくのか。いよいよ人類は、この問いと取っ組み合わなければならない時期に入っている。

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