クラウドソーシングサービスを展開するランサーズ株式会社が行った「新しい働き方大賞」に参加をした。正規でも非正規でもない、新たな働き方を実践する方を表彰するためのイベントであると同時に、全国3,094人に対して行った働き方調査の発表も行われた。
この記事では、2015年3月時点におけるこの働き方の実態調査から「日本の働き方の変化(進化)」についてご紹介する。
新しい働き方を実現している人は労働人口の5人に1人!
日本の広義のフリーランスは、現在労働人口の19%にあたる1228万人にまで到達してきているという。ちなみにランサーズでは、この新たな働き方をする人を4つのカテゴリーで把握している。
・副業系すきまワーカー:常時雇用されているが副業としてフリーランスの仕事をこなすワーカー(593万人)
イメージ例)本業以外のやりがいや生活費の補助を目的に、週の数時間を副業にあてる若年層
・副業系パラレルワーカー:雇用形態に関係なく、2社以上の企業と契約ベースで仕事をこなすワーカー(124万人)
イメージ例)自分のスキルや特技をいかしてフレキシブルなライフスタイルを実践するワーカー
・自由業系フリーワーカー:特定の勤務先はないが独立したプロフェッショナル
イメージ例)組織に務めていたが、定年前の退職や出産を機に自らやりたいことをやるために独立を決めたワーカー(約75万人)
・自営業系独立オーナー:個人事業主・法人経営者で、1人で経営をしている(約436万人)
イメージ例)スキルや資格、顧客資産などを糧に長く自活している独立したプロフェッショナル
約5人に1人(約20%)が新たな働き方を実現しているという意味合いは、これまでになく大きい。なぜなら、16%という普及のためのティッピングポイントを超えてきているからだ。これから劇的にこのような働き方は増えていく。ランサーズは、先日テレビCMを業界初で展開したが、重要な布石となるに違いない。
新たな働き方を実現する個人の年収は高い!
上の図の一番下に位置するノン・フリーランスは、1つの会社のみで働く通常のワーカーのこと。その上が4つのタイプの各年収別の割合だ。副業系と自営業系が通常のワーカーより年収が多いという結果が出ている。
自分のコアスキルを各所に提供する副業系は、コミュニケーションコストが下がったことにより、より気軽なパラレルワークが行えるようになった。
更に、自由業系フリーワーカーは、取引におけるあらゆるコストを効率的に削減しながら、自身のコアスキルを磨きあげ、取引先を拡大していると思われる。いずれにせよ、これまでの正規、非正規という枠組みにとらわれない働き方の経済的合理性が、日本においても明確に現れてきた。
独立前よりも独立後の方が労働時間が短い!
今回、各賞を受賞した6人のうち5人が、就職して働いていた時よりも労働時間が短くなったと回答をしている。
ただ、一度でも独立して働いたことがある人は分かるだろうが、独立直後は、自分のプライベートと仕事の時間のバランスを崩して、疲労し切るという状態に陥る場合が多い。
一方で、その期間を乗り越えていけば、徐々に働く時間を少なくしながらも、収入をより多く稼いでいくという効率性を高められる。
働き方に求めるものは、自由さ、柔軟性
日本の働き方のモチベーションランキング第一位が「時間や場所に縛られず、自由で柔軟な生活ができる」となっている。米国では(調査:Freelancing in America)、収入面のメリットがダントツ一位となっている。もちろん収入は大事だが、家族との時間や、より自主管理できる範囲を増やしたいと考える人が、日本人には多い。
これは、欲求がより高度に変化してきていることを意味するのだろう。どこまでも膨張する個人的欲望を満たすことよりも、自己実現や身近な人達の幸せ、また社会に対する貢献的な生き方が、支持されていると言えないだろうか。
パラレルキャリアは、働き方の基本的価値観となった!
通常のワーカーのうち76%もの人が、パラレルキャリアを望んでいるという結果が分かった。
「働き方の『柔軟性』は新たな『安定性』」という記事でも記したが、どの事業も、3年先、5年先が見えない時代を私たちは生きている。そのような社会において、安定とは一体何なのか?それは、柔軟性それ自体なのだ。
あらゆる意味において、このパラレルキャリア思考は、21世紀の働き方の基礎となっていく。
人口減少・地方創世時代、新しい働き方は”社会的な要請”となった!
ランサーズにおいて、仕事の依頼の54.3%が東京の企業である。一方、受注しているのは、75%が地方の個人。つまり仕事は、クラウドソーシング上で地方に再配分されていることが分かる。これは、地域における社会問題の解決にも直結している。
若い人が、地域で暮らしたいけど暮らせない…。その最大の理由の1つが「仕事がないから」だ。しかし、どこでも仕事ができる環境が整っていくことは、地域創世という観点からも重要なメリットとなる。
現在広義のフリーランサーは、1,200万人であるが、この数字は先端を走る現在の米国の数字から考えてまだまだ少ない。プラス1,000万人の、2,200万人という数字がスライドでは示されていたが、それくらいの数字まではゆうに伸びていくだろう。
また、もう1つの重要な課題である日本全体の人口減少問題は、即、働き手不足という課題につながってしまう。一人一人の生産性の向上、つまり新たな働き方の推進が、この問題の解決の糸口を探ることにもなるのだ。
この新しいワークスタイルの潮流は、一部の人達の個人的満足を高めるための支流ではなく、社会の強烈な要請が後押しする大潮流だ。
以上、5つのトピックは、これからの働き方を考える上で、重要な示唆を与えてくれる。