客観的な課題について人間よりも的確で素早い判断ができるAI。
想像したものがすぐに現実化するテクノロジー。
物理的な距離や言語の壁を超えたコラボレーションが可能になる情報環境。
こんな未来が容易に想像できるのが僕らの生きる現代だ。
不安か希望かは別にして、自分たちの仕事や生活に訪れる、大きな変化について考えることも多いだろう。
自分たちよりも若い世代については、さらに想像が難しい。
例えば、今の子供たちが大人になったとき、どんな職業が世界には存在しており、そこではどんなスキルが必要とされているのか?
例えば、小学生に対して、何を学ぶように勧めたら、どんな時間を過ごせるようにしてあげたらいいのだろうか?
今の社会で必要とされている「実務的なスキル」を薄めたようなものはおそらく意味がないだろう。
基礎的なトレーニングとしては、ここ数十年は「英語」が、最近は「プログラミング」を幼少期から学ぶことの重要性がうたわれているが、これらも、今から20年後の世界でも同じく重要かと問われると、難しそうだ。
機械との競争に負けないこと、つまり、人間にしかできないことを手掛かりに考えると、おそらく、
・自分を取り囲む環境から豊かな情報を読み取れる「感性」
・野生の素材を自分の手でさわり、道具や装飾を「つくる力」
このあたりがヒントになりそうだ。
美しさに感動したり、畏怖の感情をもったりする力は、AIにはまだ遠いし、例えば「庭師」は、ロボット化から最も遠い職業である、という。森や林など、データベース化できない自然にわけいり、自分が「ふと気になった」ものを素材として選び、必要なものを「適当に」こしらえたりする能力は、実は非常に高度で人間的なものなのだ。
自然の中での生活と、そこで得られる野生的・原始的な能力。日本でも昔は当たり前だったと言われるような環境だが、残念ながら、今の東京で育つ子供たちには、与えるのが難しい。
しかし、このような体験を与えてあげることこそが、今、もっとも大切なのではないだろうか。
実は上に挙げた写真は、MORIUMIUS(モリウミアス)という複合体験施設でのひとコマ。MORIUMIUSは公益社団法人 sweet treat 311が運営する体験施設。東日本大震災のボランティアで石巻市を訪れた油井元太郎氏らの呼びかけで設立された。
MORIUMIUSのプログラムに参加する子供たちは、築90年超の木造の建物に宿泊し、地元の自然素材を自分たちで調理しながら食事を摂る。お風呂をわかす蒔も自分で用意する。
また、先の写真のような、森や海での体験プログラムも充実している。豊かな自然とのふれあいはもちろん、そこに生きる人との交流を通じ、たくましく生きる力を育むことができる。
はじめはうろたえるばかりの都会っ子も、数日すると、活動に参加できるようになるという。人間が本来持っている、しなやかさや好奇心が開花するのだろう。
森と海に囲まれた土地で、きれいな空気と水に触れながら、自分の手と足で生活を紡ぐ。
始原的な活動を通じて得られるスキルこそが、遠くの未来にも通じるのだ。
MORIUMIUS(モリウミアス)
http://www.moriumius.jp/
7泊8日サマープログラム(子供のみ)
http://www.moriumius.jp/news/2015/5/22/78
2泊3日サマープログラム(大人も参加できる)
http://www.moriumius.jp/news/2015/5/22/23
運営団体について(公益社団法人 sweet treat 311)
http://sweettreat311.org/about