『IoTビジネス入門&実践講座』 の著者が語るIoTビジネスの正しい始め方

[2016/8/19]
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このメディアでも度々紹介しているSocial Design Salonのメンバーから書籍が発売される運びとなりました。Social Design Salonから生まれた書籍としては記念すべき第一号です。

昨年末にサロンオーナーの長沼 博之さんからサロンメンバーの荻原 裕さんにバトンが渡され3月には企画化。半年間の産みの苦しみを乗り越えて9月2日の発売となりました!Amazonからのご予約はこちら

今回は、Social Design Salonのメンバーでもあるわたくし黒田が、共著者のお一人である荻原 裕さんと対談する機会をいただけました。

IoTビジネスの最初の一歩を踏み出す具体的なフレームワークと丁寧な解説が惜しげもなく掲載されている本書。IoTについて学んだことのない方はもちろん、IoTに比較的詳しい方も、実践に向けてお手にとっていただきたい一冊となっています。


 

黒田:今日はどうもお時間いただきありがとうございます。書籍の出版おめでとうございます!

荻原:ありがとうございます。IoTというぼんやりとした概念の整理とその伝え方に悩んだ部分もありましたが、考え抜いたものを世に出せるのは本当に嬉しいです。

黒田:確かに、IoTという言葉は多様な場面で異なるイメージで使われていますよね。この言葉が使われるようになったのはいつ頃なのでしょうか。

荻原:IoTをキーワードにしたGoogle検索が伸びたのは2014年ですが、言葉自体は1999年から存在するみたいですね。私自身は7年前に創業5年目のハードウェアベンチャーのアップサイド株式会社に転職してからは電子部品の海外営業を担当するなかでIoTについて触れる機会が増え、次第にIoTビジネスに関わるようになっていきました。

黒田:この本のなかでは、IoTはどのように定義されているのでしょうか?

荻原:IoTという言葉はロボットやビッグデータ、人工知能やインダストリー4.0の文脈で出てきたり、あるいはガジェットの機能として語られたりすることもあります。しかし本書では一貫して、私たちが生きているこの現実世界のデータをセンサーによって吸い上げて、クラウド側で分析した結果を元に現実世界にフィードバックする一連の仕組みをIoTと呼んでいます。

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荻原:そのIoTの一連の仕組みのなかに、センサーで収集したビッグデータを人工知能で解析したり、その結果をロボットの動作にフィードバックするという具体的な活用方法があったりするわけです。

黒田:こういった一連の仕組みよりも具体例ばかりがフォーカスされてきたから「IoTって結局なんだっけ」という全体像が抜け落ちているのかもしれませんね。例えば、最近のIoTビジネスにおいては後半のフィードバックの部分が弱いイメージがあります。

荻原:そうなんですよね。データを収集するだけでは片手落ちです。ただ、そうなっている理由もあります。フィードバックをするには現実世界のモノを動かす必要がでてくるので、データの処理だけでは済まない。要求される技術レベルが高くなってしまう。IoTにおけるフィードバックについては今後特に動きがありそうな部分です。

黒田:今回、この本を書いた荻原さんの動機はそのようなIoTの未来について発信したいという想いがあったのでしょうか。

荻原:それもありますが、どちらかといえば明日からでも実践できる本にしたいと考えていました。IoTビジネスをまずは小さく始めて欲しい。小さく始めて素早く動いて大きくしていけばいいんです。企画ばかりに時間を割いて大きな絵を描くよりもまずは実践してみましょうよと。実際にIoTビジネスの相談を受けることも多いのですが、技術的なことを抜きに大掛かりな企画をするものの、実現不可能なアイディアになっていたりするのがもったいない。

黒田:大きく考えて大きく始めようとする人が多いのですね。

荻原:特にIoTは大企業や海外のインダストリー4.0のような事例によって、企画者が夢見がちになってしまっているケースもあると感じます。この本を通じて、IoTビジネスをもっと身近に感じてもらって、一歩踏み出して欲しいと考えています。

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黒田:一歩踏み出す手前の「IoTとは何か?」という人でもOKですか?

荻原:はい、そういう人たちのために、本当に基本的なところも書いてあります。「IoTとは何か」「IoTでどんな世界が実現するのか」という可能性についても感じていただきながら、自分事に感じられるような身近な例も挙げて解説しています。一例として、お米の残量を検知してスマートフォンに通知し、すぐECで注文できる仕組みを紹介しています。これはIoTによって取引コストを削減した事例ですね。

黒田:私もよく牛乳を切らしてしまうので、今すぐにでも欲しい仕組みです。「取引コストの削減」以外にどのようなパターンがありますか?

荻原:実は、IoTが提供できる価値のパターン化には苦労しました。最終的に以下の5パターンに分類することができました。先ほど言った「取引コストを削減する」以外にも、「使用価値へのアクセス」「データのビジネス資源化」「コンシェルジュ型サービスの提供」「トラブルの事前回避」という価値があります。世の中にあるIoTのサービスは全てここに当てはまると思います。

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黒田:IoTの5パターンからアイディアを発想することもできそうですね。IoTビジネスを実際に作っていく考え方についてはどのように書かれているのでしょうか。

荻原:今回の執筆ではその考え方やフレームワークを体系化することにかなり神経を使いました。IoTビジネスをスムーズに始めるための考え方を体系化したフレームワークを10パターンほど作ってようやく納得のいく形になりました。フレームワークの詳しい解説もつけたので、これさえ読めばあとは実践あるのみです。

黒田:まさにIoTビジネスの羅針盤のようなイメージですね。この本の指す方角に歩き出そうという。具体的にはどのような流れで企画を進めるとよいのでしょうか?

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荻原:具体的には4段階あります。それぞれの段階を「テーマとビジョンの決定」「ビジネスアイディアの創出」「ビジネスモデルの構築」「成長レベルの確認」と名づけました。アイディアの創出に使う「IoTプランニングシート」と成長レベルの確認に使う「IoTビジネスコンパス」というフレームワークはこの本のオリジナルです。特に後者は、まさに先ほどおっしゃっていた羅針盤(コンパス)の役割を果たすフレームワークです。

黒田:では、その「IoTプランニングシート」についてお伺いしたいです。IoTのビジネスアイディアは、技術的なことを考えながらユーザーへの提供価値を考えなくてはいけないのでハードルが高そうな印象があります。

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荻原:そんなことはありませんよ。技術的な知識が多くない人でも使えるように、IoTを活用したサービスを考える上で技術的な勘所を自然と考えらえるようなフレームワークにしました。まずは「提供価値」「サービス」の部分で、どんな価値を提供するのか、それはどのようなサービスなのかを上段部分でまとめます。

その次に、「モノ」「顧客」の部分で何をIoT化するのかを考えます。モノの設定は重要で、なんでもありではなくて、既存の「顧客」との関係のなかに存在する「モノ」を設定するのがよいです。

黒田:自転車メーカーなら自転車、店鋪だったら店の設備全体が対象になりうる、という感じですね。

荻原:そうです。椅子をIoT化すれば混雑率をデータにして「空いているから来てね」というマーケティングができます。ここで設定したモノからどのような「データ」を取るのか、「アナリティクス」では「データ」をどのように分析するのかを考えます。

加えて、「インプットデバイス」ではデータはどこに貯めるのか、「コネクション」では通信の仕方はどうするのか、ということを考えます。Bluetooth等でスマートフォンと連携してスマートフォンから通信するか、あるいはSIMを使う場合もあり得るでしょう。

少し分かりにくい言葉かなと思うのが「アクチュエーションデバイス」ですが、これはフィードバックを担うもので、体温計で例えれば体温が表示される液晶がアクチュエーションデバイスです。

黒田:ウェアラブルデバイスが「座り過ぎだからそろそろ立ち上がりましょう」という通知を振動で与えてくる場合は、その振動を生み出す装置がアクチュエーションデバイスにあたるわけですね。

荻原:はい、フィードバックという意味ではチャットボットも広義のアクチュエーションデバイスと呼べるでしょう。

黒田:IoTプランニングシートの左側にある「パートナー」というのは製造を担う企業というイメージですか?

荻原:そうですね。開発する企業と量産する企業が違ったりするので、そういった業務もどの企業にお願いするのか検討しておきます。また、Webサービスの経験がない企業であればサーバーについてもパートナーを見つける必要がありますね。

黒田:自社で完結せずに外部のリソースをうまく使うのがポイントですね。このIoTプランニングシートをベースにビジネスモデルに落としこむわけですね。ここでは一般的な事業にも使われるビジネスモデルキャンバスを使うようなので詳細は省きますが、その後に使うオリジナルの「IoTビジネスコンパス」はIoT特有の検討事項がまとめられていてかなり重要そうです。

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荻原:はい、このIoTコンパスというフレームワークは「How(どのように価値を提供するか)」「What(何の価値をそれは提供するのか)」「Who(誰にその価値を提供するのか)」「Why(なぜそれが利益を生み出すのか)」の4つのブロックに分かれています。

それぞれのブロックにはいくつかの項目があり、番号が振られています。その番号が大きくなるほど実現の難易度と提供価値が増していきます。例えばWhatの部分についてお話すると、「1.振舞の追跡」というのは単純な見える化ですが、そこから「2.認識」「3.分析」などを経て「6.複合的な自律システム」に至ります。この6の段階は自動運転のようなサービスです。

黒田:番号が大きくなるほど難しいということは、最初の一歩としては番号が小さいプロダクトやサービスから取り組むのがよい、ということになりますね。

荻原:はい。目指すのは「6.複合的な自律システム」だとしても、始めるのはその手前の「1.振舞の追跡」あたりから始めるべきです。このように、考えているアイディアの難易度を見極めて、高すぎるようであれば簡単なものにして動き出せるレベルを探っていくためのツールです。

黒田:企画の進め方の全体像としては、「テーマとビジョンを決めて」「IoTプランニングシートでアイディアを出し」「ビジネスモデルキャンバスを構築して」「IoTビジネスコンパスで実践に着地させる」という感じですね。こうして俯瞰できれば、まずはビジョンを決めようとプロジェクトが動き出しそうです。

荻原:そうですね、フレームワークの紹介だけではなく、フレームワークをどのように使うのかという丁寧な解説もつけていますので、どんどん実践していただきたいと思います。

黒田:この本を読んでいろいろなIoTビジネスが立ち上がってほしいですね。

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荻原:そうですね。IoTは「やるべきだけど人間がやると面倒くさくてできなかったこと」を実現する有効な手段だと思います。例えば、以前横浜市のマンションが傾いて問題になりましたよね。これも面倒くさいけどデータをしっかり取得して分析すれば回避できたかもしれない。人の手でやると手間がかかることが、IoTだととても簡単にできてしまう。

黒田:アクティビティトラッカーも、「今日は〇〇Km走った」というようなデータを自分で書き溜めていけばいいのですが、それがとても面倒くさいですね。健康管理のためにはやるべきだと思うのですが。それもIoTのガジェットによって自動的にデータが蓄積されるようになると面倒くささが解消されて、多くの人の健康に寄与することになったわけですね。

荻原:他にも、屋外広告の看板がどのくらい見られているかを人力でカウントしているケースがあるそうですが、それもカメラを使って認識できれば、広告効果を簡単に測定できるようになります。

黒田:WebでいうPV測定みたいなものですね。やるべきだったけどできなかったことをIoTで実現できるようになれば、様々なことが効率化できる。その例で言えば、屋外広告の内容を見ている人の属性に応じて自動で切り替えるなどの適切なフィードバックを返すことで高い付加価値も出せますね。

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黒田:最近はIoTの進化に伴ってハードウェアベンチャーが増えていますね。この状況についてはどう思われますか?

荻原:チャレンジする企業が増えるのは良いことだと思いますが、ハードウェアのアイディアからスタートすることは避けてほしいですね。

黒田:それはつまり、ハードウェアはサービスの全体像の一部であってハードウェアを前提にしてはいけないということでしょうか。

荻原:まさに。ユーザーへの価値提供を実現するための仕組みの一部としてハードウェアを作るべきで、「こんなハードウェアあったら面白いよね」みたいな始め方は危ういです。ハードウェアを中心にすると、本来重要なはずのサービス提供価値の方が取ってつけたものになってしまいます。

黒田:ハードウェアを作ってみたものの「そんなニーズはなかった」ということになりかねませんね。どこかで行き詰まる。

荻原:ですから、この本で紹介しているフレームワークではユーザーや市場の視点を外さずにIoTビジネスを生み出すことを重視しました。タイトルを「IoTデバイス」でなく「IoTビジネス」としたのは、デバイスの作り方ではなく、IoTを組み込んだビジネス全体の企画・設計について伝えたかったからです。

黒田:この「IoTビジネス入門&実践講座」はIoTの初めの一歩を踏み出す手引書として最適ですね。今後、この本に絡めて何かイベントなどされたりする予定はありますか?

荻原:まだ実現するかわかりませんが、この本を使ったアイディアソンみたいなものをやってみても面白そうですね。

黒田:是非そのアイディアソン参加したいです。発売も楽しみにしています!今日はどうもありがとうございました!

 

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 IoTビジネス入門&実践講座

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インタビュアー

黒田 悠介 フリーランス ディスカッションパートナー

 

 

日本のキャリアの多様性を高めるために自分自身を実験台にしている文系フリーランス。ハットとメガネがトレードマーク。ベンチャー社員×2→起業→キャリアカウンセラー→フリーランスというキャリア。主な生業はディスカッションパートナー(壁打ち相手)で、新規事業の立ち上げを支援しています。個人では「文系フリーランスって食べていけるの?」というメディアを運営。CxO Discussion Partners 創始者。詳しい経歴はこちら

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