日の昇る時代、高度経済成長期。私も好きな映画 「ALWAYS 三丁目の夕日」に象徴される時代です。
その高度経済成長を牽引した、1960年池田勇人内閣の時に閣議決定された「国民所得倍増計画」。こちらが最初の文言です。
(1)計画の目的
国民所得倍増計画は、速やかに国民総生産を倍増して、雇用の増大による完全雇用の達成をはかり、国民の生活水準を大巾に引き上げることを目的とするものでなければならない。この場合とくに農業と非農業間、大企業と中小企業間、地域相互間ならびに所得階層間に存在する生活上および所得上の格差の是正につとめ、もつて国民経済と国民生活の均衡ある発展を期さなければならない。
この後も内容は長く続くのですが、ここでご紹介したいのは、国民所得倍増計画の底流に流れている哲学は「完全雇用」であり、「格差の是正」であったということです。
これによって、他の高度経済成長国にも見られない「一億総中流」という誇るべき歴史を残すことができたのです。
しかし、現代、国家の経済成長における目的は、国家間の経済競争を最重要視するものにすり替わっています。この国家間の経済競争においては、「富を一部に集中させること」が当然効率が良いわけです。
よって、現在の経済議論においては、完全雇用であったり、格差是正という哲学が事実上抜け落ち、「国家間競争に勝利するための、企業利益最大化」が目的となってしまっているのです。
パラレルキャリア(多職)時代はもう始まっている
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しかし、これは決してただ単に「政治のせい」というわけではありません。
現代においては、成長産業は雇用を生まないのです。
インターネット関連企業を見ていただいても分かりますが、企業は工場を作る必要もありませんし、できる限り仕事は自動化しようします。Googleの検索エンジン広告にしても、コンピューターによる自動出稿ですので、人はほとんど必要ありません。
また、大きな雇用を生むためには、その仕事は多くの人ができる仕事でなければいけません。しかし、その仕事は簡単に賃金の安い海外にアウトソーシングされます。そして、今後は、益々ロボットがこれらの仕事をこなすようになるでしょう。
製造業大手各社が副業を認めはじめ、佐川急便で働く「佐川女子」まで大きな注目を集めはじめています。
この時代に適合したワークスタイルは「パラレルキャリア」「多職」ということでしょう。「本業を持ちながら、NPOで活動する」「どれが本業とも言えない仕事を4つほど掛け持ちしている」「2つほど仕事をして、野菜やお米は自給している」「自分で起業しているけど、ちょっとアルバイトもしている」といったことです。20代、30代では、もうこの傾向は顕著に現れ始めています。
この働き方は、これまでの価値観からすると、ちょっと恥ずかしいことに思えるかもしれません。しかし、このようなことが普通になっていきます。1つの事業の寿命が極端に短くなり、1つの会社、1つの仕事というのは非常にリスキーになっているのです。
また、これらの仕事の中には、お金が入るものもあれば、お金ではなく、評価を獲得する場所である場合もあります。このワークスタイルの変容を政府はどうサポートしていくのか?人口減少時代の「国民生活幸福化計画」こそが、現代の大きな課題の1つなのでしょう。