GDP(国内総生産)や企業の売上・利益最大化の議論、「お金」
を持っていることが幸せの証だ!という価値観に疑問を持つ
方々が増えています。
こういった疑問は5年前までは、若者の戯言であったり、
一部の力なき大人のいいわけ、のような捉え方がされて
いました。
しかし、今はこの価値観に疑問を持つ方々の総人口は
「存在シェア」である7%を超え、社会に影響を与え始める
「影響シェア」の10%を超えてきた感があります。
ちなみに、このGDPや売上・利益最大化の議論は日本では
いつから始まってきたのでしょうか。
例えば、日本は戦後の焼け野原の状況の中から約23年ほど
で世界第2位の経済大国にまで上り詰めました。
空襲にあっていない地域はない、と思われるほど
日本中がまる焦げになっている状況を見た、当時の
海外の人たちは「日本はどう考えても、今後50年から
100年はダメだろう」と思っていました。
しかし、日本が20年ちょっとで世界2位の経済大国に
なった時、世界は驚嘆しました。
この理由は、現在の日本がとっている国家運営モデル
である「資源を輸入し、それに付加価値をつけて海外に
販売する」というモデルが日本人の国民性にもうまく
マッチし、機能していたからです。
しかし、この国家運営モデルの根幹に、現代の資本主義
の根幹を流れる哲学である「個別企業の利益最大化」と
いう哲学が浸透しはじめたのです。
これは、もっと具体的に言うと、地域や労働者、国家を
踏み台にし、企業が株主のために利益を最大化していこう、
という流れに他なりません。
よって、町に大企業が進出し、去って行った後には、
文化もすさみ、コミュニケーションも廃退し、人の心
が荒れるという現象が多くの地域で起きてくるのです。
歴史を振り返ると、日本は、ペリー来航(黒船の来航)
の時、抵抗する術なく、開国をせざるおえませんでした。
そして、世界がなぜこれほどまでに進んでいるのかを
調べる為に、日本はアメリカやイギリスに視察団を派遣
しました。
結果、「植民地を作り、そこから安い労働力や資源を輸入
し、それに付加価値をつけて海外に高く売りさばく、という
工業化の国家運営モデルを導入することによって、国は栄える
のだ!」ということを知るわけです。
そこから、日本の軍備増強の動きは加速し、植民地支配の
軍事競争にのめり込んで行くわけです。開国から20世紀
中盤にかけてこのモデルの主役は、「国家」でした。
しかし、20世紀中盤から後半、21世紀の最初までは、この
運営モデルを、各企業が主役となって展開し、軍事競争では
なく経済競争という時代を作っていったのです。
ただ、この経済競争にしても、根幹には「自分たちの
利益のために、他国、他者から奪う」という哲学が根深く
残りました。それは「自社の継続性、利益最大化のため
には、他者の利益など考えることはできない」いった
謝った倫理観により、肯定されていったのです。
しかし、さすがに我々人類も「他人の不幸の上に、自分たち
の幸せを中長期的には絶対に築けない」ということが分かって
きました。
戦争により、何の罪もない人達が悲惨な死を迎える様、
明日食べる者もなく、餓死していく人々…をリアルや映像、
画像を通して見ているからです。
よって、このGDPや総資産最大化議論、売上・利益のみ
追求していく姿勢は長く続かないことを、多くの方々は
直感的に理解してきているのです。
これからは、自国や自社の利益のみを追求する軍事競争
や経済競争の時代は終わり、いよいよこの2010年代、
社会貢献競争時代の船出のファンファーレが鳴り始めました。
それは、今まで、社会起業家、ソーシャル・エンタープライズ
と言われるところだけではなく、あらゆる組織、団体、個人が
社会貢献性を追求していく時代のことを意味します。
単純なツールや技術の進化ではなく、社会制度や価値観が
大きく変わる500年に1度の文明の転換点にいる我々は、
とても素晴らしい価値のある時代を生きています。
短期的に見れば、大変なことも多いですが、皆で励まし
あいながら、それぞれが「最高の時代を生きた!」「最高
の人生だった!」と言えるようにしたいですね!
photo:©minamibousoushi