写真は、一瞬の価値を永遠にまで高める。その永遠性を力強くサポートするサービスの登場だ。
「Heirloom」は、過去撮って印刷した写真を、スマホで簡単にスキャニングして、デジタルアルバムを作ることのできるアプリだ。
プリントした写真は、時の流れとともにどうしても色褪せていく。それは、自分の大切な思い出とともに色褪せていくようで、切ない気持ちになる時もある。しかし、Heirloomの示す保存方法が一般化すれば、写真の永遠性は、はるか昔にまで広く行き渡る。
まずは、写真をテーブルに置き、焦点を合わせてスマホで撮影する。すると、写真が美しくデジタル保存され、時系列で並べながら、コメントまで入れることができる。まさに、自宅にある昔のアルバムを、自分のスマホに取り込むようなイメージだ。
家にある写真アルバムを、押入れから取り出して見る手間は大きい。しかし、もし、その写真がキレイにデジタル保存され、スマホでいつでもどこでも見ることができたとしたら、便利さは増し、過去の写真がより強い生命力を宿す。それは、イコールで、私たちの心をも強くすることにつながっていくように思うのだ。
心の時代の写真の役割
PHOTO: Father and son walking hand in hand from Shutterstock
仕事柄、各業界の近未来について語ることがあり、夏にはフォトビジネスの近未来について語らせていただいた。
その時に、ふと実家の押入れの中から、古い古いアルバムを取り出して、家族の昔の写真を見る機会があった。私が生まれるはるか前の親や祖父母、そして親戚の人達。白黒写真にとらえられているその瞬間は、何か私の原点を見るように、心へと強く迫ってきた。
20世紀の写真は、”真を写す”という名の通り、”事実”そのものに焦点が当たっていた。例えば、報道写真が社会に巨大なインパクトを与え、その場で一体何が起こっていたのか?という史実を示すのための役割が大きく存在していた。
21世紀、写真は、事実を写し歴史を残すという側面は、当然あるのだが、それは役割の1つにすぎなくなる。写真は、”その瞬間の心”を永遠に残すという意味において広く民主化され、一人一人の無意識の奥深くに繊細な根をおろす。ソーシャルメディアの写真の投稿は、まさにその象徴である。
写真を見た瞬間に浮かび上がる印象と心の振動は、温かくそして時にひんやりとした場所に、一瞬で私を導いてくれる。
例えば家族写真。その印象に触れることで、また明日も頑張ろう、と一呼吸をついて、前を向くことができるのだ。そんな写真の可能性に魅せられていく私たちは、いつの時代も変わらずに存在し続けていく。