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比較優位という言葉を聞いたことがありますか?自由貿易においてそれぞれの国が、自身の得意分野に特化していく事こそが、世界の経済発展を支えるとするリカードモデルの基本的な考え方です。経済学者デヴィッド・リカードが提唱した概念です。
確かに人と同じように、国にも長所や短所が存在し、それを貿易活動によって補うことは、経済的にも文化的にもよいことです。貧困をはじめとする格差問題については解決していかなければなりませんが、お互いが得意分野で補い合うという基本発想は、世界経済の成長に大きなインパクトを及ぼしたことは間違いありません。
例えば日本であれば、原材料を輸入し、それを加工して、高い付加価値をつけ海外に製品を販売するというモデルで、経済発展を遂げてきました。
今、3Dプリンターを中心とした21世紀の産業革命、ものづくり革命が進行する中で、日本はいったいどのような方向に舵をきっていけばよいのかが課題になってきています。
私はこの新たな製造文化が生まれる中、ものづくり大国日本に必要なことは、この比較優位の基本発想である「得意なことでお互い補い合うこと」だと思っています。もっと言えば、得意分野で補い合うことができる組織、コミュニティーの存在です。チーム作りの文化です。
インキュベーションコミュニティー「コーワーキングファブ」を提案
3Dプリンター等を使うデジタルファブリケーションによる産業構造転換のは、現時点では、大きく3つの方向性が見えてきています。
1つは「一人メーカー」という文脈。一人家電メーカーでGoodデザイン賞を受賞したBsizeさんがまさにそうですね。そして2つ目が中小零細企業の製造業が3Dプリントサービスを始めながら、製造メーカーへと変革していくこと。こちらの記事にも書きました。
そして、3つ目がコワーキングスペース×ファブラボで、コミュニティーからのチームを作り、プロダクト開発及び製造メーカーとして組織化していくという文脈です。この3つ目の話を図をにしたものが、上の画像「コワーキングファブを中心としたソーシャル・デザイン全体スキーム」です。
中心にあるコワーキングファブとは、私が考えている「コワーキング×ファブリケーション×ハブ」を合わせた概念であり、もっと簡単に説明すると、コワーキングスペースに、3Dプリンターやレーザーカッター、CNC装置が導入されている場所です。
コワーキングスペースは今はどちらかというと、WEB関係の仕事をされている方が多いですが「ものづくりをする人」(メイカー)にもどんどん入ってきていただきます。またもう一方のアプローチは、趣味でものづくりをする人が集まるようなファブラボを、起業したい人や起業している人がオフィスとしても使えるコワーキングスペース化するイメージです。
コワーキングファブの運営に関しては、中小企業でも、NPOでも、個人でも、場合によっては自治体でも構いません。ここを支援するために、国や地方自治体は場所、またデジタル工作機械導入の資金助成を行います。
ちなみにオバマ大統領は、2012年のはじめ、今後4年間で1000カ所の学校に、3Dプリンタやレーザーカッターなどのデジタル工作機械を完備した「工作室」を開くプログラムを立ち上げました。また2012年8月には3Dプリント技術を研究・発展させるための機関の設立も発表しました。
日本政府もこのデジタルファブリケーションの流れを支える動きをスピーディーに始めていただきたいですね。その1つにこのコワーキングファブづくりへの助成、支援をお願いしたいところです。
個人でものづくり起業というのは、若干敷居が高いところがあります。モノのデザイン、機械的な設計、マーケティング、資金調達、インターネットに関しての知識などが必要になるからです。
しかし、もしコワーキングファブに所属し、3Dデータの作成やデザイン、機械設計、インターネットマーケティングが学ぶことができたらどうでしょう?コミュニティー内のなんらかのチームに所属し、自分の得意なところ「比較優位」ポイントでプロダクトの製造・販売に貢献できたらどうでしょう?これらのプロセスを多くの人が経験できたのなら個人にとってはもちろん、日本社会にとってどれだけよいことかと思います。
個人としては、こういった場所でパラレルキャリアに挑戦し、いずれはそこから誕生したものづくりベンチャー企業にジョインをしたり、場合によっては一人メーカーとして起業してもよいでしょう。
インキュベーションコミュニティー「コワーキングファブ」のような場所は、地域活性化はもちろん、パラレルキャリア時代の働き方を大きく支えることでしょう。
そして、ものづくり文化の復活!製造業の復活!地域の復活!そして製造業におけるスタートアップがたくさん誕生することを願うばかりです。
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