中国・深圳を拠点とするハードウェアベンチャー向けのアクセラレータプログラム「HAXLR8R(ハクセラレータ)」が発表したリーンハードウェアの資金調達についての資料。
The Lean Hardware Startup: Financing
「リーンハードウェア」とは、ユーザーの声を聞きながらスピーディーに仮説と検証を繰り返して開発を進める「リーンスタートアップ」に「ハードウェア」の言葉がプラスされたもの。来年からあちこちで耳にするキーワードとなりそうです。
この資料が非常に興味深かったので、拙訳、要約、してご紹介。
まず、最初ですが2013年はクラウドファンディングサイト大手Kickstarterだけでも365ものハードウェアプロジェクトが投稿されたとのこと。1日1製品のペースで、昨年の約2倍のプロジェクト数です。
そして、こちらがハードウェアスタートアップのステップ。
1、コンセプト→2、最低限の機能を持ったプロトタイプの作成→3、完全な機能を持ったプロトタイプの製作→4、工場での製造のための設計→5、最初の工場での製作→6、小売りというプロセスです。
それでは1つ1つ見ていきたいと思います。
1、コンセプト
→この段階では、まずその製品コンセプトについて、顧客となりそうな人達から声をもらう段階。コンセプトを練り込むと同時に、需要に関しても確認する。資金についてはほとんど必要なし
2、最低限の機能を持ったプロトタイプの作成
→3Dプリンタなどを利用しながら、最低限の機能を持つプロトタイプを製作する。まず動作させてみるというところに重点を置く。この段階に必要な資金は数十ドル(数千円)から数十万円程度
3、完璧なプロトタイプの製作
→工場で作られるような最終製品を目指して、完璧な機能を持ったプロトタイプを作成する。資金は自己資金でまかなうか、クラウドファンディングやエンジェル投資家などの資金でまかなう。この段階ではベンチャーキャピタルは入らない
4、工場での製造のための設計
→製造販売の準備をする段階。部品のサプライヤーとの交渉やコスト削減について検討。値付けや販売した時の利益についても考える。資金調達金額は50,000ドル(500万円)未満なので、この段階でも自己資金やクラウドファンディング、アクセレータなどからの資金調達ですむ
5、最初の工場での製作
→出荷を始める。もし、クラウドファンディング後、数億千の資金が必要な場合は、ベンチャーキャピタルを入れる
6、小売り
→オンラインや店舗での販売を開始する。この段階にくると、銀行を含めあらゆる資金調達が可能になる
更なる詳細は、こちらのプレゼン資料から。
無数に登場するリーンハードウェア系スタートアップ
来年は2014年は、世界的にも「リーンハードウェアの年」と言われるくらい、たくさんのハードウェア系スタートアップが登場してくるでしょう。
ここでもう一度「要注目!2025年までの「ハードウェア革命」のトレンド予測」の記事より、2025年までのハードウェアイノベーションの流れをおさらいしましょう。
・現在ハードウェア革命は、アーリーアダプター(初期少数採用者)の半分くらいのところ
・2014年には、洗練されたハードウェアプロダクトのプロトタイプを一晩で作れるようになる
・2016年あたりには、ハードウェアのオンデマンド製造が可能になる
・2019年あたりには、販売後のフォロー的な営業活動よりも、事前の営業活動の方が重要となる(ハードウェアにおける予約販売が普通になる)。そのための予約販売プラットフォームも充実している
・2020年、インターネット接続されたデバイスは世界中で800億以上となり、これらのデバイスの50%以上が、新しいハードウェア企業の製品となる
・2025年には、アップルのような革新的なハードウェアメーカーが100以上存在する
今回のリーンハードウェアのステップでご紹介したように、現在「ステップ3」、つまり「完璧なプロトタイプ」を作るくらいまでは、大きな資金は必要なくなっています。
そして、今は「このステップ3までをどれだけスピーディーに行えるか」が重要となっています。ここまでやって、「本格的に進めるか」、「資金を更に調達するかどうか」を決めればいいのです。
また、それを素早く実現するためのサービスやツールは現在着々と進化を遂げてきています。
【参考】
・機械の設計・製造・販売が民主化され、産業構造が変わる。ハードウェアの設計プラットフォーム「Upverter」
・初期段階のハードウェア設計を1枚の用紙でまとめる「ハードウェアプロダクトキャンバス」
2014年と言えばGoogleGlassなどの「ウェアラブルデバイス」に注目が集まっていますが、それは消費社会の文脈においてです。
本当に注目すべきは、皆が生産者として活躍する時代「生産社会」への移行に大きな影響を及ぼす、このリーンハードウェアのトレンドなのでしょう。もちろん、このリーンハードウェア系のウェアラブルデバイスも来年は無数に登場してきますが。
様々な意味で本当に楽しみな2014年ですね。
【Social Design Newsから本が出ました】
働き方は無限大。
組織や事業の寿命よりも、人が働く時間のほうがはるかに長くなった現代。
テクノロジーの進化と人々の価値観の変化によって、「働き方」が大きく変わりつつある。
メイカーズ、クラウドソーシング、クラウドファンディング、ソーシャルスタートアップ……「仕事の未来」には、無限の可能性が広がっている。
あなたは、どの働き方を選びますか?
さらなる進化を遂げるテクノロジーと新たな時代の価値観が出会ったことで、
これまで考えられなかった(あり得なかった)ような働き方が可能となった。
今、私たちの目の前には、数限りない働き方が存在する。
私たちは、自らの働き方を自分で選び、実行していかなければならない。
それが、本書の言う「ワーク・デザイン」である。 ――「はじめに」より
本書では、これからの働き方の新構造を次の7つのステージで捉えた内容となっています。
・新しい「働く」の価値観
・消費社会から生産社会への潮流
・ワークプロセスの文明的大転換
・組織形態の変化
・キャリアデザインについて
・タスクデザインについて
・これから必要とされる個別スキル
現在の「働く構造の進化」は、各ステージをバラバラに見ても分かりません。7つの構造全体を体系的に捉えることで、始めて進化の本質が見えてきます。
Amazonの「なか見検索!」で一部内容を読めるようになっていますので、ご興味のある方はこちらからご確認ください。【書籍】ワーク・デザイン これからの働き方の設計図
※ライフハッカー[日本版]で本書を大きく取り上げていただきました。
「いま、新しい働き方『パラレルキャリア』が重要だ、と言える理由」