通勤はどこの国でも「退屈な」もの。そこでインタラクティブアーティストのDaniel Disselkoen氏は、最もシンプルでローテクなゲームを考案し話題を集めています。使っているのは2枚のステッカー。周りから見たら、ちょっとおかしいけど、それくらい夢中になってしまうんです。
仕組みは簡単。ゲームの説明が目の前に貼ってあります。
あとは、こんな感じに通行人を食べていくだけ。思わずやってしまいたくなりますね。
さて、ここからは実際に彼にアイディアのきっかけからデザインの未来までじっくり話を聞いてみました。
きっかけは自身の「通勤体験」
インタラクティブアーティストのDaniel Disselkoen氏
ーーこのアイディアが生まれたきっかけを教えてください。
Danile氏:あるとき自転車がパンクして、修理するのがめんどくさくなって、路面電車で通勤することになりました。最初はツアーみたいでとても面白かったのに半年も経つとそれが日常になりました。雪とかが降れば、景色が変わっていいんですけどね。
あとオランダでは路面電車でスマホを見ている人が多いんです。これをなんとかしたいなと感じていました。この2つが主なインスピレーションですね。
小さいけど人の振る舞いを変えるシンプルさ
ーー普通テクノロジーを使って通勤を変えようと考えてしまいますが、すごくシンプルでアナログなアイディアですよね?
Danile氏:長い間、いつも解決策は「テクノロジー」に集中していました。テクノロジーが嫌いなわけではないし、むしろ興味があるくらいです。テクノロジーを使う以外にも気づいていない他の方法もあると思うんです。
問題は、どうやって人に見ようとしていない何かを見させるかということ。アプリもありますが、ダウンロードするのが面倒です。今回のアイディアは路面電車に乗って想像力を持ってゲームをするだけ。たったそれだけなんです。たとえば5人食べたぞ!とか3人食べたらレベルアップとか(笑)。どれだけ小さくできるかというのが、私が大切にしているシンプルな美しさです。
ーーどうやってインサイトを見つけたのですか?
Danile氏:いろんな業種の友達がいて、ジャーナリスト、生物学者、クライアントもスポーツからファッションまで彼らから色々学んでいます。
同じ世界にいて同じ世界を見ていても、違ったものの見方をしている。どうやったら違うものの見方を人に見せることができるか、デザインすることができるかということだと思います。
たとえば働き方も根本から変えられると思います、イーロン・マスクではないので僕はできないですけど(笑)皿洗いでも長時間の通勤でも。つまらないことを面白くすることはできないかと考えていますよ。
ーーインタラクティブアーティストという肩書ですが、インタラクションとは何でしょうか?
Danile氏:ヨーロッパだけかもしれませんが、デザインというとUI、UXとデジタル分野が盛んです、相互作用(インタラクション)を使ってなにをしたいのか、何を達成したいのかだと思います。デザインとアートの違いは難しいです。互いに交差することもありますし。しかし1つ言えることは必ずテクノロジーを使わなければいけないということではありません。
「問い」を持ち続けること
ーーデザインの未来について教えてください。
Danile氏:難しい質問ですね、テクノロジーと現実の世界がどう交差するかそれがインタラクションの始まりなのです。個人的な意見ですが、学生だった時、2つのグループがいました。手仕事タイプといわゆるテックタイプです。
今、流れとしては手仕事タイプの人間ががテクノロジーを使い始めています。例としてはスマホですね。今後はハードウェアを含むテクノロジーがどう現実と結びついていくかというところでしょう。僕が好きなのはテクノロジーを使ってどう新しい見方、感じ方を作るかということです。昔、PCからクリック一つでCDが出てきたときは驚きでしたね(笑)
すべてのデザインは問いだと思うんです。現在に対する問い、未来に対する問い。もし問いを持っていれば、テクノロジーが来た時、それを鵜呑みにすることがなくなるでしょう。なにか議論したり、考えたりできるように感じるのです。50年後も良いデザイナーとは「問うこと」ができることだと思います。
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いつアイディアを思いついているの?と聞いたところ、「家で皿洗っているのときかな?笑」とのこと。彼の新しいプロジェクトも近日公開される予定。こちらから他の作品も要チェックです。
ライター&キュレーター
小檜山 諒 フリーランスライター&キュレーター
世界中の面白いアイディアを集めたブログを運営中。「問いが変われば、答えも変わる」を信じて、アイディア発想など研究しています。ハッとさせられるようなアイディアが大好物。アイディアデザインコンサルタント。モットーは「LESS IS MORE」